2022 Fiscal Year Annual Research Report
炭化珪素及びタングステンハイブリッド繊維強化高靭性タングステン複合材料の開発
Project/Area Number |
21H01063
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
檜木 達也 京都大学, オープンイノベーション機構, 特定教授 (60372596)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | タングステン / 炭化珪素 / 複合材料 / 織布 / ダイバータ |
Outline of Annual Research Achievements |
タングステン(W)材料は核融合炉におけるダイバータ等への適用で期待されているが、中性子照射環境下における脆化が懸念される。Wの融点は高いものの、1000℃程度の再結晶温度以上では靱性は低下してしまう。本研究では、Wに対して炭化珪素(SiC)繊維やW繊維での強化という、セラミックス複合材料の破壊力学を取り入れた全く新しい手法により、中性子照射環境下、また再結晶温度を超えるような温度域においても優れた破壊靭性と除熱性を得られる材料の開発を目指す。 SiC繊維のみでWを強化する場合、繊維束層における伝熱性が懸念される。本研究では、繊維束層での伝熱性確保のために、SiC繊維とW繊維の織布で強化する材料の開発を目指している。本年度は21年度に作製に成功したSiC繊維とW繊維の織物を用いて、Wを母材とする複合材料の開発を行った。SiC繊維は優れた耐熱性と耐中性子照射特性を持つ高結晶性繊維であるNGS社製のHi-Nicalon type-Sを用いた。W繊維は日本タングステン株式会社製のものを用いた。SiC繊維にW繊維を織り込む際にピッチの異なる3種類の綾織の織物を用いた。 3種類の織物のいずれにおいても、焼結時に剥れるようなことは無く、緻密な複合材料の作製に成功した。いずれの試料においても、引張試験において延性破壊挙動を示した。作製温度がWの再結晶温度を超えているため、繊維強化による擬延性挙動と考えられる。W繊維のピッチの影響に関しては限定的であった。 SiC繊維とWとの反応を抑制する界面相を選択するために、高純度SiC、界面相候補材、Wの接合材の作製を行った。界面相の形成は、複合材料に適用可能なスラリーのディッピング法で行った。様々な酸化物、炭化物、窒化物で試作した結果、Er2O3が界面反応の抑制には有効であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SiC繊維とW繊維の織物を用いて、Wを母材とする複合材料の開発を行った。SiC繊維は直径10um程の繊維が500本束になっているものを用いた。W繊維は直径100umのものを用いた。織布は織機で作製し、経糸をSiC繊維、緯糸をW繊維として、織組織は4/4(経糸と緯糸を4本ずつ浮かせる)綾織を採用した。SiC繊維とW繊維の割合調整のために、緯糸のピッチを0.3mm、0.5mm、0.7mmの3種類の織物を作製した。織物は0°/90°方向に交互に母材原料を挟んで積層し、1700℃、20MPaでホットプレスにより焼結を行った。母材として80um厚のW箔とW粉末を用いた。 作製した試料は引張試験片に加工し、室温での強度評価を行った。母材で用いた同じ種類のWに1700℃の焼鈍を行い、室温で引張試験を行うと脆性破壊挙動を示すが、本研究で作製した材料はいずれも延性挙動を示した。破面観察から顕著な繊維の引き抜けなどは確認されなかったが、複雑な破面を示し、繊維強化による擬延性破壊挙動が生じたことが確認された。ピッチの影響に関しては、0.7mmのものが最も高い平均強度を示したものの、ピッチによる有意な差は見られなかった。 反応抑制のための界面材料の検討を行った。基本的な反応の理解のために高純度のCVD SiC上に界面候補材料となるZrO2、TiO2、Er2O3、ZrC、TiC、ZrN、TiNの被覆膜を複数回のディッピング法により形成し、複合材料の焼結条件でWとの接合試験を実施した。Er2O3に関しては、5回のディッピングにより550nmの被覆が形成され、SiCとWの反応の抑制に成功した。他の被覆においては、同様に5回のディッピングで形成した被覆膜ではSiCとWの反応の抑制ができず、W側に厚い反応層が形成された。反応抑制のための界面材料としてはEr2O3が有望であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
22年度までにSiC繊維とW繊維の製織技術を確立し、これらを用いてWをマトリックスとした複合材料の基本的な作製技術は得られた。23年度以降においても、温度、圧力、原料、繊維体積率などの最適条件の検討を進めるが、特に実環境の高温環境や照射効果を考慮して、強度や熱特性に対する最適化を進める。 SiC繊維は結晶性の高いHi-Nicalon type-SまたはTyranno SAを用いる。作製した材料の評価方法としては、微細組織、強度、熱伝導評価を行う。1000℃を超える高温環境の影響に関しても評価を行う。SiC繊維とW母材の界面、繊維束内と繊維束間の微細組織の違い等について、走査形電子顕微鏡、透過形電子顕微鏡やエネルギー分散型 X 線分光装置等で観察、分析を行い、作製条件、繊維と母材の界面を中心とした破壊挙動と微細組織との関係を明らかにする。 SiC繊維とWとの反応を抑制する界面相を検討するために、高純度SiC、界面相候補材、Wの接合材の作製を行う。界面相の形成は、複合材料に適用可能なスラリーのディッピング法を中心に検討を行う。作製した接合材のSiC-界面相、W-界面相の界面を電子顕微鏡で観察を行い、反応層やそれらの厚み等の評価を行い、最適な界面相の選択と界面相形成条件の最適化を行う。 耐照射特性評価を行うために、SiC、W、界面相を対象にイオン照射試験を行う。照射温度は、日米科学技術協力核融合分野のFRONTIER計画で実施される中性子照射試験と比較可能となるように、500℃、800℃とWの再結晶温度の1000℃を超える温度から検討を行う。照射後の試料は電子顕微鏡による組織観察を行うとともに、原子間力顕微鏡を用いた寸法変化の評価を行う。界面で生じうる照射ミキシング等に関する評価も行う。
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Research Products
(3 results)