2021 Fiscal Year Annual Research Report
Ultraprecise measurement of the fine-structure constant using a strontium atom-wave interferometer
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21H01089
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳥井 寿夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40306535)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | レーザー冷却 / ストロンチウム / 準安定状態 / 磁気光学トラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
従来のレーザー周波数安定化法は、周波数変調を用いて原子の吸収曲線の微分信号、つまり誤差信号を得るものであるが、周波数変調器やロックインアンプを必要とするため、装置全体が煩雑になるという欠点があった。そこで、周波数変調を用いずに磁場によって誘起された原子気体の複屈折性を利用して微分信号を得る手法(birefringent atomic vapor laser lock, BAVLL)をストロンチウム原子のホローカソードランプに適用し、その周波数安定度(約1 MHz)がストロンチウム原子のレーザー冷却に十分であることを実験的に示した。 原子を供給するための原子オーブンとレーザー冷却のための真空チャンバーは別々の真空ポンプによって差動排気されるのが通常であるが、ストロンチウム金属膜がもつ背景気体の吸着作用に注目し、差動排気を用いず、原子オーブンとレーザー冷却のための真空チャンバーを1台のイオンポンプで排気するという真空系で、10^(-10) Torrという超高真空を実現し、10^6個のストロンチウム原子を磁気光学トラップすることに成功した。 ストロンチウム原子の原子干渉計を構築するためには、原子集団を数μKまで冷却する必要があるが、そのためには線幅が7kHzと非常に狭いスピン禁制遷移のレーザー冷却がこれまで用いられてきた。これに代わる手法として、準安定状態(5s5p 3P2)の偏光勾配冷却を提案し、その前段階である準安定状態の磁気光学トラップを実現し、偏光勾配冷却に十分な長さである65 msという寿命を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年12月に使用していたストロンチウム原子オーブンが枯渇するという想定外の事態が起こった。後の解析により、原子オーブンにつけられた白金温度計が、実際のオーブンの温度より80℃ほど低い値を示していたこと、その結果として当初の想定の10倍程度の原子ビームの流量を放出していたことが判明した。ストロンチウム原子の再充填のため、真空系を大気圧に戻す必要があり、ストロンチウム原子のレーザー冷却実験が一時中断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に実現したストロンチウム原子の準安定状態(5s5p:3P2-5s5d:3D3遷移)を用いた磁気光学トラップ(green MOT)の性能向上を行う。具体的には、冷却レーザー光(496nm)を、現在の3本の折り返しビームではなく、6本の独立したビームとし、輻射圧の微調整を可能にする。また、音響光学変調器を用いて、冷却レーザー光の光強度および周波数をミリ秒の時間で制御可能とする。磁気光学トラップされた原子を偏光勾配冷却によってさらに冷却するため、磁気光学トラップ用ガラスセルを磁気シールドで覆う、または補正コイルを導入して、環境磁場を取り除く。回転導入機による原子ビームシャッターを配置し、かつ、原子オーブンから磁気光学トラップ用ガラスセルまでの距離を30㎝まで短くした新しい真空チャンバーを新たに導入し、磁気光学トラップの性能向上を目指す。
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Research Products
(3 results)