2021 Fiscal Year Annual Research Report
反K中間子という新プローブで拓く原子核物理にとっての「New Physics」
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21H01097
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
市川 裕大 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (50756244)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ストレンジネス / TPC / K中間子原子核 |
Outline of Annual Research Achievements |
J-PARC K1.8ビームラインにおいて、KURAMAスペクトロメータとHypTPCを中心とするHyperonスペクトロメータを用いて、令和3年度にデータ取得(E42実験)をおこなった。E42実験は、12C(K-, K+)反応を用いたHダイバリオンの探索を主目的としているが、本研究では、E42実験のデータに含まれる12C(K-, p)反応を用いてK中間子原子核の探索を行う。E42実験中には、約30日のダイヤモンド標的による物理データの取得以外に、キャリブレーション用のKURAMA電磁石ON/OFF、Hyperonスペクトロメータ用電磁石ON/OFFの状態で、Beam Throughのデータを取得した。このBeam Throughのデータを用いて、KURAMA Spectrometerの位置検出器とHypTPC検出器の位置のキャリブレーションを行うことができる。また、同様にスペクトロメータのキャリブレーションの為にCH2 標的のデータを取得した。 データ取得後は、Beam ThroughやCH2標的のデータなどを用いて、HypTPCのキャリブレーションを進めた。また、KURAMA スペクトロメータ側の解析も進め、p(K-,K+)Ξ-反応を用いて、Ξ粒子の生成率、Missing mass分解能を見積もり、スペクトロメータの健全性を評価した。 また、研究会等で、本研究計画に関する発表やPreliminaryな解析結果の報告をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した通り、12C標的を用いた実験(J-PARC E42実験)を2021年中に取得することができたため、計画は順調に進展しているといえる。 当初予定では、本研究予算を用いてHypTPCに用いる予備のGEM増幅器(Gass Electron Multiplier)を購入する予定であった。しかし、実験準備段階で、GEMの構成を変更した方がレート耐性及び、GEMの増幅率を向上できそうなことが判明したため、予備のGEMの購入は見送り、GEMの構成を再検討したのちに、購入することにした。しかし、E42実験は、印可電圧(増幅ゲイン)を低くすることで、実験中故障することなくGEMを動作し続けることができたたため、計画全体としては、問題なく進展している。なお、GEMの構成に関して、破損する可能性の最下段(三層目)のGEMを12分割から40分割に変更することで改善が見込める判断し、2022年度に繰越予算を用いて、40分割のGEMを購入した。 既存のKURAMAスペクトロメータ(前方検出機群)の解析については、実験中及び、実験直後に検出器のパラメータ調整を概ね行うことができた。そのため、キャリブレーションの精度は不十分ながら、KURAMAスペクトロメータでの運動量解析や粒子識別解析の状況をすぐに確認することができた。 一方、HypTPCを中心検出器としたHyperonスペクトロメータについては、E42実験がHyperonスペクトロメータを用いる最初の実験であるため、予定していた通りではあるが、データ解析には時間を要することがわかった。しかし、実験中にHypTPCのイベントディスプレイなどで、粒子が磁場中で飛跡が曲げられている事象を確認できたため、HypTPC検出器が不感領域などなく正しく動作していることは確認できたので、全体としては概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、この2021年に取得したJ-PARC E42実験のデータ解析を進める予定である。KURAMAスペクトロメータの解析に関しては、パラメータ調整の精度を上げて、運動量分解能など各種性能が十分達成できていることを確認する。Hyperonスペクトロメータの解析に関しては、キャリブレーション用のデータを丁寧に解析し、HypTPCに必要な様々な較正を行なっていく予定である。 このE42実験での12C標的を用いたデータで、(K-, p)反応スペクトルにおいて、Λpなど終状態の粒子を同時検出することで、K中間子原子核についてシグナル/バックグラウンド比が想定通りに向上するかを丁寧に検証する予定である。想定通りシグナル/バックグラウンド比の向上が達成できれば、12C標的だけでなく、様々な原子核標的を使用した次回実験を実施すべく準備を進めていく。 また、次回実験では、最下層の三段目のGEMを全て40分割にすることで、印可電圧を下げずにデータが取得できるようになると考えており、今後、テストベンチでの検証を進める予定である。
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