2022 Fiscal Year Annual Research Report
反K中間子という新プローブで拓く原子核物理にとっての「New Physics」
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21H01097
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
市川 裕大 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (50756244)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ストレンジネス / TPC / K中間子原子核 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、2021年度に取得したE42実験データ(12C標的)のデータ解析を実施した。まず、KURAMAスペクトロメータの解析を行い、E42実験での12C(K-, p)反応のスペクトルが、先行研究(J-PARC E05実験)で得られた同反応のスペクトルと概ね一致していることを確認した。 次に、Hyperonスペクトロメータ(中心検出器:HypTPC)のデータ解析を進めた。キャリブレーション用のBeam Throughのデータを解析し、Hyperonスペクトロメータの運動量分解能を算出した。現在のところ、運動量分解能は、シミュレーションから求めたデザイン値には達成できていないが、今後さらに解析の精度を上げて、運動量分解能の向上する予定である。特に、キャリブレーション用に取得した多粒子トリガー(4つ以上の荷電粒子が生成したイベントを選択するトリガー)のデータがHypTPC検出器の位置較正に有用であることが、解析の結果わかったので、この較正の精度を上げていく予定である。 また、CH2標的のキャリブレーションデータのHypTPCを用いた解析で、Λ粒子の崩壊事象、及びΞ粒子の崩壊事象を同定することに成功した。この同定により、HypTPCでの運動量の解析と粒子識別が概ね正しく機能していることを確認することができた。しかし、Λ粒子やΞ粒子の質量分解能はデザイン値には到達できておらず、不十分なため、今後キャリブレーションの精度を上げて、分解能を向上させていく予定である。 分解能が十分な値になったら、HypTPCでΛpが検出されている事象を選択した12C(K-, p)スペクトル(exclusive spectrum)を求め、K中間子原子核の生成に関して議論を行う予定である。これらの内容に関して、国内外の研究会で口頭発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年に取得したJ-PARC E42実験に進展が見られたため、概ね順調に進展している。 KURAMAスペクトロメータを用いた解析はほぼ、完了しており、(K-, p)反応だけを同定したinclusive spectrumは、先行研究(J-PARC E05実験)と概ね一致しているが確認できた。 Hyperonスペクトロメータの解析は、ハフ変換によるトラッキングコードの開発が進んだ。また、各読み出しパッド毎のゲインパラメータ調整、位置較正などのキャリブレーションも進んだ。結果として、分解能は不十分ながら、Λ粒子やΞ粒子の崩壊事象をHypTPCで同定することができた。これは大きな成果といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2021年に取得したJ-PARC E42実験の解析の精度をさらに向上させる予定である。特にHyperonスペクトロメータの解析はΛ粒子やΞ粒子を同定できはしたものの、未だ分解能が不十分であるため、今後解析の改善が必要である。また、(K-, p)反応での散乱陽子の運動量解析に関しても、現状ではKURAMAスペクトロメータの情報のみで解析を行なっているが、HypTPCの情報も組み合わせることで、運動量分解能の向上が見込まれるため、組み合わせた運動量解析の解析コード開発も進めていく予定である。来年度中にこのJ-PARC E42実験のデータ解析を完了させて、標的核を変えた次回実験の準備に取り組んでいきたいと考えている。
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