2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the correction term for the Fermi golden rule using multi-methods
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21H01107
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
陣内 修 東京工業大学, 理学院, 教授 (50360566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武貞 正樹 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (30311434)
尾田 欣也 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (60442943)
櫻井 浩 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (80251122)
石川 健三 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (90159690)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フェルミ黄金率 / 陽電子消滅 / X線コンプトン散乱 / ラマン分光 / 散乱理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子力学の遷移確率計算で基礎となる「フェルミ黄金率」に対する補正項として,量子波束の性質に基づく遷移定数成分 (Pd補正項)を提案しその存在を検証する実験・理論研究を行っている。3つの量子電磁力学過程を用いた実験および理論研究を行った。(1) 陽電子消滅実験に関しては先行研究を凌ぐ測定感度向上にむけた装置改良を進めてきた。陽電子線源の強度を上げたことによるパイルアップ事象を効率的に取り除く機構の導入と検証を行ってきた。実験室の環境放射線を長時間測定し背景事象への寄与を評価した。(2) X線コンプトン散乱実験では,Al単結晶のコンプトン散乱X線エネルギースペクトルを測定した。理論計算と比較した結果、高運動量成分の計測数が理論計算より多かった。これはフェルミ黄金律補正項の寄与の可能性がある。(3) 光のラマン散乱実験においては,フェルミ黄金律補正項に由来した散乱問題を検証するため高性能半導体励起固体レーザーを導入し光学系の構築を行った。先ず標準試料の高分解能スペクトルを測定し構築した光学系の評価を行った。(4) 理論研究では、量子力学の基本的物理量である状態遷移の確率を規格化波動関数(波束)で計算し、従来の平面波による計算では不定であった定数項まで含めて求めた。この遷移確率は、従来の確率にはない性質をもち、従来の範囲を超えた領域と分野に適用でき、従来の確率で説明・理解が困難であったミクロからマクロまでの現象の理解を可能にする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの量子電磁力学過程を用いた実験および理論研究の進捗を述べる。(1) 陽電子消滅実験に関しては,先行研究に比して陽電子線源を大幅に強化しており事象重複の影響を抑えるための機構を導入した。また実験室の環境放射線由来の誤信号率を評価し順調に進んでいる。(2) X線コンプトン散乱実験では,金属結合・共有結合など複数の物質の電子運動量分布のX線コンプトン散乱測定を比較する計画である。2021年度は金属結合物質の測定が終了した。概ね計画通りである。(3) 光のラマン散乱実験においては,実験システムの構築が完了し概ね計画通りである。測定波長精度をさらに向上させる必要が生じたため標準光源を導入し各測定毎に装置の温度ドリフトの効果についてモニタリングすることを可能にした。当初の予定通りに研究が進展している。(4) 理論計算では,共鳴状態を中間状態に持つ2体散乱の振幅を、波束に基づいて解明した。その結果共鳴状態の波束の振幅には黄金律項と補正項がともに必要であることが示された。またQEDプロセスや強い相互作用粒子の遷移で,補正項が黄金律項にはない特徴や大きさを持つことが示され,補正項が自然現象において重要な役割を演ずることが確認・検証された。これらの論文は現在準備中であり,予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
3つの量子電磁力学過程を用いた実験および理論研究の今後の推進方策を述べる。(1) 陽電子消滅実験では,改良を進めてきた実験セットアップでの中期測定を行う。試験測定では見られない問題点を洗い出す。(2) X線コンプトン散乱実験では,フェルミ黄金律補正項の寄与を考慮した理論計算と比較するために,バックグラウンド・多重散乱などの寄与を検討する。Siなど共有結合性物質の測定を検討する。(3) 光のラマン散乱実験においては,構築した光学系を用いて基礎測定を開始する。波束の効果と散乱角度依存性を明らかにするため高分解能スペクトルを測定する。幾つかのターゲットに対して測定を実行し対照実験を開始する。(4) 理論計算では,量子力学に基礎を置く遷移現象を,平面波による近似的な記述に代わり規格化状態(波束)によって厳密に定式化する。この結果を物理だけでなく幅広い自然科学分野におけるミクロからマクロまでの現象に適用する。これにより太陽コロナ加熱,異常レーリー散乱,他の未解明な問題を解決する。
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