2022 Fiscal Year Annual Research Report
ダイヤモンド薄膜を用いた次世代高輝度粒子線実験のためのガス放射線検出器開発
Project/Area Number |
21H01111
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
越智 敦彦 神戸大学, 理学研究科, 准教授
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Project Period (FY) |
2021 – 2024
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Keywords | マイクロパターンガス検出器 / ミューオン検出器 / ダイヤモンドライクカーボン / 高エネルギー実験 / μ-PIC |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度の研究成果から絶縁層として有望なソルダレジストを用いた基板を用いてμ-PIC型の検出器を製作し性能評価を進めた。 また、μ-PICを始めとするMPGD検出器の高ガス増幅率を実現するために引き続きダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いて高抵抗カソード層をつくる。DLCを用いることで放電を3-4桁抑制することが出来るが、この際の最適な表面抵抗率を実現するためのDLC成膜条件などを探索した。 従来のDLC μ-PICで問題のあったアノード部分の形状と絶縁素材の抵抗性について特に調査をすすめ、アノード部分の形状では、μ-PICの製造の際にアノードの位置を合わせるために必要なアノードリングと呼ばれる層が形成されていたが、製造方法を改善してアノードリングが生まれない方法でμ-PIC検出器を施策した。また、絶縁素材にソルダレジスト(SR)が使用可能であることがわかり、SRを使用したμ-PICの開発・製造も行った。 作製した、SR μ-PICの性能を調査した。アノードリングに関してはまだ完全に除去されず再度製作手法を検討する必要が出てきたが、ソルダレジストの絶縁性は十分であることがわかり電圧を印加することが可能になった。ゲインカーブの測定にも成功し、従来のμ-PICと比較しゲインが低いことが観測された。また、ソルダレジストの厚み50-100μmに変えることでゲインの変化が10-15%であることも観測された。 また、CCDを用いてμ-PIC検出器の光読み出しにも挑戦し、CERNでの高強度X線装置を用いることで、ピクセルごとの雪崩増幅をイメージとして観測することにも成功した。これによって、今まで電気的な読み出しでは難しかったピクセル毎の欠陥なども観測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイアモンドライクカーボンを用いたμ-PICの試作機を制作し観測された問題点を次期試作機に取り入れることで安定性や性能の向上が進められている。特にソルダレジストを用いたμ-PICを製造し、性能評価を行った。また、SR μ-PICと従来のドライレジスト(DR)を用いたDR μ-PICの性能比較をすすめ、今後の改善点などを確認することが出来た。 さらに、μ-PICをドリフト電極を透明導電膜(ITO膜)、ガスをCF4を用いてX線で光学読み出しを行うことが出来た。今まで観測することが出来なかった、電子なだれにおける増幅を可視化することにも成功し、様々な知見を得ることが出来た。X線の装置を使い2次元の物体のイメージ図も取ることが出来、テストパターンから位置分解能も測定した。 今まで、共同研究を行ってきたCERN RD51ラボは今後DRD1として組織が刷新されるが、DRD1に参画するための議論も積極的に行い、今後の方針を確認することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、今年度性能評価を行ったSR μ-PICで観測された改善点に取り組む。また、μ-PICの性能評価を詳細に進めるために、外部のビーム施設などを用いたビームテストを検討する。特に本課題研究では大強度のバックグラウンドの入射環境下での動作試験が重要となることから、大強度のX線照射施設であるKEK Platform C、大強度の高速中性子環境が得られる神戸大学海事科学部加速器施設などの利用を想定している。また、位置分解能、時間分解能の試験も重要であり、このためにCERN SPSのH4ビームライン等を使用することを想定している。 また、成功した光学読み出しで観測された、低ドリフト電場の振る舞いの理解も進める。 さらに、DLCを用いた低物質量Resistive Plate Chamberの開発も進め、放射線耐性や動作安定性の改善に向けて試験を行っていく。DLCの抵抗値のコントロール手法の改善にも取り組む予定である。
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