2021 Fiscal Year Annual Research Report
初期宇宙の大質量星から生まれるブラックホールの性質の解明
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21H01123
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅田 秀之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60447357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 信吾 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (40772900)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 超巨大星 / 超巨大ブラックホール / 初代星 / 大質量星の進化 / 宇宙初期のブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
聖川他(2021)と谷川他(2021)の論文においては、種族合成(Population synthesis)の手法を用いて、初代星から作られる連星ブラックホールについて調べた。具体的には連星ブラックホールの合体に伴う重力波放射と、将来的に可能となるその重力波検出観測を念頭に置き、どのような質量のペアの合体がどのような頻度で起きるのかを計算した。聖川他の論文ではこれまでにあまり調べられていなかったペア不安定型超新星よりも重い星(初期質量が太陽の約300倍以上)の連星進化を調べ、典型的な質量や合体頻度を求めた。これらの結果は将来建設予定のアインシュタイン重力波望遠鏡等により検証されることが期待できる。谷川他においては、恒星の進化理論の不定性の一つであるオーバーシューティングの度合いが連星合体頻度に及ぼす影響を調べた。特にその影響はブラックホール形成が禁止されるとされているペア不安定型超新星の質量範囲(Pair instability mass gapと呼ばれる)への影響が大きく、研究者の間でしばしば仮定されているギャップ領域は必ずしも正しくないことを示した。 Nagele他(2021)の論文においては、本研究課題の主要目的の一つである超大質量星の進化について詳しく調べることの手始めとして、1万太陽質量の初代星の主系列段階から重力崩壊までの過程を一般相対論の効果を考慮した恒星進化コードと流体力学コードを用いて計算した。本研究では特に重力崩壊時におけるニュートリノ放射について注目し、その強さやスペクトルを計算し、ニュートリノ背景放射へ及ぼす影響等について議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID19の影響に伴い、海外に在籍する共同研究者と行う予定であった重力崩壊と爆発計算を行う多次元コードの開発には遅れが生じたが、本科研費を一部繰越しするなどして対応を行い、遅れも取り戻せてきている。本研究計画におけるそれ以外の部分については、おおむね順調に進行し、査読論文に3本結果を発表することなどもできている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も宇宙初期における超巨大星の進化を中心に研究を進める。これまでの研究により、これらの超巨大星の一部は巨大なエネルギーで超新星爆発を起こすことが明らかになってきた。そのため、今後の研究ではこれらの爆発するモデルについては、爆発によってどのように見えるのかについて明らかにし、また爆発しないものについては、その最終的な質量を決め、観測されている超巨大ブラックホールとの関連について議論を行っていく計画である。
またニュートリノ輸送の計算のできる一般相対論的な多次元シミュレーションコードの開発も進めている。それを用いて、本研究で計算した大質量星の重力崩壊、爆発現象、重力波放出や元素合成について調べていく計画である。
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