2022 Fiscal Year Annual Research Report
地震波データの多面的解析によるスロースリップ発生域の水移動モデルの高度化
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21H01176
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中島 淳一 東京工業大学, 理学院, 教授 (30361067)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地震波減衰 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の研究により、沈み込む海洋プレート表面でスロースリップが発生すると、プレート境界に溜まっていた水が上盤プレートへ放出されることが明らかになってきた。茨城県南西部のフィリピン海プレート境界においては繰り返し地震をふくむプレート境界地震が多く発生し、その地震活動の直上で地殻内地震も発生している。これらの地震活動は約1年周期で繰り返し起こっており、それらはプレート境界から放出された水が原因で発生していると解釈されている。しかしながら、放出された水の移動過程やその分布域などの理解は十分でない。今年度は昨年度までに推定していたQs構造を再精査することで、プレート境界地震とその直上の地震間のQp, Qsの高精度推定を行い、Qp/Qsの時間変化を明らかにした。得られた結果によれば,Qp/Qsは約1年周期で時間変化し,その大きさはプレート境界でのすべりレートに対応する。つまり大きなすべりが生じた期間はQp/Qsが大きいという特徴がある。プレート境界から流体が供給されると、その経路上に存在するクラックに充填され,そこでミクロスケールでの流体の移動が生じると考えられる。今回推定したQp/Qsの時間変化はプレート境界からの水の供給レートに起因すると考えるとその周期性を説明できる。一方で、流体を含むクラックの存在範囲やその休刊スケール(特徴的な長さ)などに関する情報は得られていない。今後は固液複合系の理論的・実験的研究を取り入れながら結果の解釈を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地震波減衰の振幅依存を示す観測成果が得られた。しかしながら、その定量的解釈はまだ十分でなく、次年度以降に理論モデルの構築を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに解析した地震活動について、S波スプリッティング解析を行い、速いS波の振動方向から異方性の方向を分離した2つのS波の時間差から異方性の強さを推定する。その際、2011年東北地方太平洋沖地震前後での異方性パラメータの時間変化なども考慮して議論する。これらの解析が順調に進んだ場合には,その発生に流体の寄与が示唆される上盤地震のメカニズム解の推定も行い、非ダブルカップル成分の大きさから断層運動の特徴を抽出する。
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