2022 Fiscal Year Annual Research Report
Why do intra-slab earthquakes occur ? Relationship with the three-dimensional distribution of olivine metastable phase, temperature, and dehydration
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21H01180
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉岡 祥一 神戸大学, 都市安全研究センター, 教授 (20222391)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 淳一 東京工業大学, 理学院, 教授 (30361067)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スラブ内地震 / 太平洋スラブ / オリビン準安定層 / 温度分布 / 脱水分布 / プレートの断裂 / 震源時間関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の実施計画は、① 地震発生メカニズムの包括的理解に不可欠な同一のスラブにおける地震の震源パラメターの系統的な深さ変化の解明(中島)、② 太平洋スラブ内のオリビン準安定相領域の3次元空間分布の特定(中島・吉岡)、③ オリビン準安定相の存在を考慮したスラブ深部の3次元温度分布を計算するコードの開発(吉岡)、④ 太平洋スラブ深部の3次元温度分布・含水量分布の推定(吉岡)、⑤ 脱水脆性化説、相転移断層説、熱的不安定説の特定(吉岡・中島)、となっている。 上記①は、昨年度までに実施し、②に関しては今年度実施した。Kawakatsu and Yoshioka (2012)の構造解析の手法を参考に、レシーバー関数のプログラムを開発し、概ね完成した。また、その入力データとなる遠地地震の情報を収集し、解析を行う準備を整えた。 また、地震波速度トモグラフィ、中部日本下に沈み込むフィリピン海スラブの形状を推定した。その結果、大阪湾北部から能登半島にかけてはフィリピン海プレートの連続的な沈み込みがイメージングされたが、東海から能登半島にかけてはフィリピン海プレートが断裂していることが示唆される。この断裂はフィリピン海プレートがその直下に沈み込む太平洋プレートに接触したことで生じていると解釈できる。一連の成果は国際学術誌に投稿中である。また、沈み込むスラブ内で発生する地震の震源過程を明らかにするために、2003年宮城沖地震の余震を用いて破壊継続時間と破壊の指向性を推定した。比較として、同規模の内陸地殻内地震、プレート境界地震についても同様の解析を行った。得られた結果からは、スラブ内地震の破壊計測時間は同規模の他の地震に比べてやや短いことが示唆される。また、断層破壊に指向性を持つスラブ内地震も存在することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中島・吉岡は、上記のようにベクトリアルレシーバー関数解析のプログラムを開発し、また、その入力データとなる遠地地震を収集し、中部日本下の具体的な地震波構造解析を開始する準備を整えた。 また、中島は、地震波トモグラフィと二次元の粘性流体計算を用いたフィリピン海プレートの沈み込み様式の研究が進み、成果は論文として投稿することができた。また、コロナ禍でやや研究が遅れていたスラブ内地震の破壊継続時間についても新しい結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
中島・吉岡は、上記②の構造解析を実施し、中部地方下の上部マントル内の地震学的構造、特に速度不連続境界面の詳細、特にそれらの3次元的な空間分布をレシーバー関数解析によって明らかにする。 吉岡は、上記③の温度構造モデリングのコード開発を継続して進め、中部日本下に適用する準備を整える。 中島は、中部日本下のフィリピン海プレート形状の理解を深めるために、遠地及び近地地震を用いたS波スプリッティング解析を行い、マントル対流の方向に関する知見を得る。また、マントル遷移層におけるスラブ内鉱物の相転移境界の位置とスラブ内地震の発生場所の関係を明らかにするために、遠地地震を用いたレシーバー関数解析を行う。こられの研究により、太平洋プレート・フィリピン海プレートの沈み込みによる対流パターン、および太平洋プレート内の温度構造を観測から制約することを試みる。
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