2021 Fiscal Year Annual Research Report
イオンダイオードを用いたマイクロ・ナノ流動現象の究明
Project/Area Number |
21H01246
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
土井 謙太郎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20378798)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 電気流体力学 / イオン電流 / イオンダイオード / マイクロ・ナノ流路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,これまで独自に研究開発を行ってきた,液中のイオン濃度測定技術を確実なものにし,さらには,それを用いてマイクロ・ナノスケールの流動現象を究明することを目的とする.従来,トレーサ粒子を用いた流動現象の可視化が行われてきたが,ナノ流路においては粒子の大きさや物性が流動現象に及ぼす影響が無視できないことが危惧されることから,さらに微小なトレーサ粒子が必要とされる.一方で,可視光では位置と速度を正確に測定するための十分な分解能を得ることが困難となる.そこで,液体中で最小の粒子と考えられるイオンを用いて流動現象を解析する方法を提案したい.そのために,ナノ流路構造において非対称な電流電圧特性を示すイオンダイオードを作製してイオンの濃度測定法を確立し,それを用いてイオン電流と流動現象の相関を調べ,理論モデルに基づいてナノ流路内部の流れ場を定量評価するための方法論を構築する. ナノメートルサイズの流路において流体の極性によりイオン選択性が見られることから,イオン電流の整流作用を利用して液の流動現象を計測するための原理の開発とシステムを構築する.そのために,まず,電解質溶液で満たされたナノ流路を用いて非対称な電流電圧特性を示すイオンダイオードを構成し,流路壁面の帯電の影響によるイオン選択性を確認する.材料の特性により,たとえば流路壁面が負に帯電するとき,液中は陽イオンが支配的に分散する環境にあり,電場や流動によって陽イオンの電流が発生する.これは,バルクの液中では見られない,ナノスケール特有の界面導電現象である.ナノ流路に接続される外部流路の流動によりナノ流路の陽イオンが輸送されると推察され,そのときに生じるイオン電流と流動現象の相関を調べることにより,流れ場を定量評価する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,イオン電流の整流作用を実現するためのナノ流路の設計製作と電気計測システムの構築に注力した.所属機関の微細加工装置群を駆使することにより,線幅500nm程度の微小な直線流路構造を作製することができている.また,それを用いたイオン電流計測を行い,電流電圧特性から整流作用が現れる条件を探索した.流路構造とイオン濃度により液の抵抗が大きく変化することから,出力が計測装置の測定レンジに収まるよう実験条件を絞り込んだ.おおむね当初の研究計画通りに進展していると考えられる.一方で,整流作用を最大限に発揮するイオンダイオードの流路構造や電解質濃度について最適な条件を見出すには至っておらず,次年度も引き続き検討が必要であることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように,イオンの整流作用を最大限に引き出すためのナノ流路の構造と液の条件を最適化することが課題のひとつである.さらに,次年度以降は,イオンダイオードを用いた定量評価を実現するため,電解質溶液に標準液を用いて導電率と塩濃度を評価する.また,必要に応じて塩濃度に対する導電率の校正曲線を作製する.これらを用いて,任意の試料液の導電率または濃度の測定を行う.さらに,ナノ流路をマイクロ流路に接続し,マイクロ流路の液が駆動されるときのイオン電流の変化を計測し,液の流量や流速とイオン電流との関係を明らかにする.
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