2021 Fiscal Year Annual Research Report
粗さ壁面の乱流熱伝達の革新的予測モデルの開発と伝熱制御に関する新展開
Project/Area Number |
21H01266
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
桑田 祐丞 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40772851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須賀 一彦 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60374089)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 粗面乱流 / 乱流熱伝達 / 直接数値解析 / 格子ボルツマン法 / 感温性塗料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では,格子ボルツマン法による直接数値解析を行い,粗面乱流の熱伝達のスケーリングを議論した.具体的に,3次元の不規則粗面を対象に,粗面スケール・レイノルズ数を系統的に変化させた解析を実施し,速度粗さ関数,温度粗さ関数,レイノルズアナロジファクタ,乱流量分布のスケーリングに関する議論を行った.その結果,速度粗さ関数・温度粗さ関数は粗さレイノルズ数のみの関数として表現され,レイノルズアナロジファクタは粗さレイノルズ数,摩擦係数,プラントル数の関数としてスケーリング可能であることが示唆された.また,レイノルズ応力分布は粗面スケール・レイノルズ数どちらにも依存するが,滑面からのレイノルズ応力の変化量は,粗さレイノルズ数のみの影響を受けることが明らかになった.また,直接数値解析を用いて,粗面の波長が乱流熱伝達に与える影響を調査し,その結果,波長の短い粗面は波長の長い粗面と比較して,レイノルズアナロジファクタが大きくなることが分かった.つまり,波長の短い粗面は,少ない流動抵抗で大きな伝熱促進効果が得られることが明らかになった. また,本年度は粗面の乱流熱伝達を計測するために,風洞装置を新設した.風洞装置には薄膜ニクロムメッキと温度に応じて発光強度が変化する感温性塗料を用いて滑面を挿入し,加熱滑面の伝熱計測を行った.感温性塗料が塗布された面に,青色レーザー光を照射し,塗料面をカメラで撮影した.撮影画像を処理することによって発光強度を取得し,発光強度分布から温度分布へと変換した.本年度においては,加熱滑面のヌセルト数を取得し,文献と比較を行うことで,おおむね妥当な結果が得られることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,格子ボルツマン法による直接数値解析によって,粗面乱流熱伝達に関する諸量である速度粗さ関数・温度粗さ関数・レイノルズアナロジファクタのスケーリング則を導くことが出来た.これらは,今後に実施予定の様々な粗面を対象としたスケーリングの基礎を成す知見であり,次年度の研究に向けて貴重なデータを得ることができた.その他にも,粗面上の乱流フラックス・分散フラックスの分布に関しても,粗さレイノルズ数の関数として整理されることが明らかになるなど,粗面乱流熱伝達のスケーリングに関して多くの知見を得ることに成功した.また,本年度は,粗面のマルチスケールの影響を調査する前段階として,シングルスケールの正弦波粗さ壁面の乱流熱伝達を直接数値解析によって議論した.その結果,波長の短い粗面は,波長の長い粗面と比較して少ない流動抵抗で高い熱伝達率が得られることが分かって.これは,本研究の最終目標でもある機能性粗面の創生に向けて重要な知見である.本年度の数値解析では,乱流熱伝達のスケーリング則の導出・機能性粗面の創生という大きな目標に対して,当初に予定したよりも多くの重要な知見を得ることに成功した.一方で,感温性塗料を用いた実験に関しても,初年度で風洞装置の設計からスタートし,滑面を対象とした検証実験まで終えることが出来た.また,得られた熱伝達率も文献値と比較して概ねの一致が得られる等,当初の予定以上の進捗で実験研究を進めることが出来た.このように,本年度では,実験・数値解析ともに多くの成果を上げることができており,研究は当初の予定以上の進捗で進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
数値解析に関しては,前年度はシングルスケールの波状粗面の乱流熱伝達の議論を行い,波長の影響に関する重要な知見を得た.本年度は機能性粗面創生に向けて,非等方的なマルチスケール粗さの波長に関する詳細な調査を行う.具体的には,主流方向・スパン方向とで異なる波長を有するマルチスケール粗面を対象として,乱流熱伝達を決定づける粗さの幾何パラメータに関する知見を得ることを目標とする.数値解析は格子ボルツマン法による直接数値解析を行い,スーパーコンピュータを用いた大規模解析を実施する.本解析では,幾何パラメータがバルク量に与える影響を調査するとともに,運動量・熱輸送メカニズムを調査することで,熱伝達を決定づける新たな粗面幾何パラメータの可能性を調査する.また,波状粗さとは別に,砂状粗さ・角粗さ等を対象に等方・非等方な配置も含めて様々な粗面を対象として,乱流熱伝達の直接数値解析を行う.これによって,波状粗さを中心に議論した内容の汎用性を調査する.加えて,今までに調査されてこなかった粗面幾何パラメータ・流動パラメータを用いて乱流熱伝達のスケーリングを目指す. 実験に関しては,前年度は風洞装置の設計からスタートし,滑面を対象とした検証実験まで終えることが出来た.しかし,依然として壁面熱伝達の精度は十分とは言えない.本年度は,実験の精度向上を目標として,風洞装置を含めた実験装置の改良を行う.滑面を対象として精度向上を進め,本年度中には粗面の熱伝達計測実験を行い,過去の文献やこれまでに蓄積した直接数値解析のデータと比較を行うことで,実験の妥当性を検証する.
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