2021 Fiscal Year Annual Research Report
ベイズ最適な性能に迫る畳み込み近似的メッセージ伝播法の創出
Project/Area Number |
21H01326
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
竹内 啓悟 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30549697)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 6G / 大規模MIMO / ベイズ推論 / メッセージ伝播法 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ベイズ最適な性能を達成できるように、通信路行列の漸近特異値分布を容易に評価できる人工的な空間相関モデルを仮定して、畳み込み近似的メッセージ伝播法における畳み込み係数と軟判定関数を設計した。まず、研究代表者が過去の研究で確立した状態発展法を利用して、畳み込み近似的メッセージ伝播法の収束性が厳密に保証されるように、畳み込み係数を解析的に決定した。 軟判定関数の設計には、軟判定前の誤差の漸近分布に関する情報が必要である。研究代表者の過去の研究から、この分布は平均ゼロの独立同一なガウス分布であることが分かっている。そのため、軟判定前の誤差の分散を評価することで、設計に必要な漸近分布を完全に特定できる。 分散の計算には、研究代表者が過去の研究で提案した方法を応用した。まず、評価すべき分散を非線形な連立差分方程式の解として定式化した。次に、変数変換によって方程式系を線形化し、Z変換を用いて連立差分方程式の解析解の母関数表現を導出した。最後に、解析解を逆Z変換することで、評価すべき分散の時間領域表現を得た。 この分散の表現に基づき、ベイズ最適な軟判定関数を設計した。設計基準には、復調結果の平均二乗誤差を用いた。さらに、ベイズ最適な軟判定関数を利用した畳み込み近似的メッセージ伝播法の性能も理論的に評価した。 理論解析および数値シミュレーションの結果、ベイズ最適な軟判定関数を利用した畳み込み近似的メッセージ伝播法は、通信路行列の条件数が大きくない場合、ベイズ統計学上の性能限界を達成できることを示した。しかしながら、通信路行列の条件数が大きい場合に、畳み込み近似的メッセージ伝播法は不安定化することもわかった。不安定化の要因を理論的に解析した結果、状態発展方程式の解として、ソリトン波のような解が出現することが原因であることを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトのテーマである「ベイズ最適な畳み込み近似的メッセージ伝播法」と題する論文を、情報理論分野のトップジャーナルであるIEEE Transactions on Information Theoryおよび同分野のトップコンファレンスである2021 IEEE International Symposium on Information Theoryで発表した。このことから、研究開始当初に想定していた最難関の課題は解決済みと評価できる。ただし、通信路行列の条件数が大きい場合に、畳み込み近似的メッセージ伝播法が不安定化するという想定外の結果も生じたため、今後はこの課題に取り組んでいく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
畳み込み近似的メッセージ伝播法の不安定性を解決する前段階として、メッセージ伝播法の収束性を証明するための一般的な方法論の提案を目指す。メッセージ伝播法の収束は、一般に自明でなく、アルゴリズムごとの収束性の理論解析や数値実験による収束性の検証が必要であった。収束が立案時点で原理的に自明となる長期記憶メッセージ伝播法を構築することで、メッセージ伝播法の収束性を証明する戦略の樹立を目指す。 2022年度は、上記の証明戦略の練習問題として、直交近似的メッセージ伝播法(OAMP)に着目して、長期記憶OAMP(LM-OAMP)を提案する。各メッセージの更新にベイズ最適な方法を用いた場合に、LM-OAMPは、大システム極限で収束し、OAMPと等価であることの証明を目指す。
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Research Products
(8 results)