2021 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導転移端センサーを用いた量子交流電流標準の研究
Project/Area Number |
21H01345
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
天谷 康孝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (10549900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 晋久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 首席研究員 (30371032)
福田 大治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 首席研究員 (90312991)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 精密電気計測 / 交流電流測定 / 超伝導転移端センサ / サーマル・コンバータ |
Outline of Annual Research Achievements |
電気を熱に変換して熱電対で測定する極めて古典的な原理で動作していた既存の交流電流センサーに「量子技術」を導入して、交流電流の測定精度を飛躍的に高めることが本研究の狙いである。本研究により、「量子技術」と既存技術を相乗的に用いた新原理の交流電流測定の確固たる技術の基盤確立を目指す。本研究の完成により、我が国が抱えるカーボンニュートラルなどさまざまな課題の解決や、将来の持続的な成長・発展等に寄与できることが期待される。今年度は研究計画に沿って、熱電効果や低周波での非線形な熱損失による寄生効果を有限要素法による数値シミュレーションにより評価した。熱電効果について一次元熱方程式を用いて予備的な検討と一致する傾向を得た。つまり、熱電効果(トムソン係数)の温度依存性を考慮した非線形熱方程式を摂動法により解くと交直差は近似的にトムソン係数の温度係数と環境動作温度の積の2乗に比例して大きく減少することが示された。また、既存の熱電対型のサーマルコンバータの測定の限界感度を明らかにするため、 熱的等価回路網計算を行い、信号ノイズ比の理論的な計算を行った。その結果、主要なノイズは熱ノイズ(ジョンソンノイズ)であり、これをもとに既存の熱電対型サーマルコンバータの測定感度を表す基礎的な式を導いた。この結果は、電気標準の中では最も大規模な国際会議である精密電磁気計測国際会議(CPEM2022)で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、有限要素法によるシミュレーションによりサーマル・コンバータの低温動作の利点が明らかになったが、次年度以降予定している冷凍機システム試作で、部品調達が遅れる可能性が出ることがわかってきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、TES型交流電流センサーを実装するための冷凍機システムを試作する。当該冷凍機にはTESの抵抗読み出しに用いる超伝導量子干渉計(SQUID: superconducting quantum interference device)を実装し、交流電流センサーのヒータ温度を正確に位相ロックする技術を確立する。この手法は申請者らの研究でニオブ製のTESを用いて光のパワー測定を液体ヘリウム温度(4 K)で行う実験系で実績がある方法であるが、電流測定へ導入は世界で初めての試みとなり、既存に光パワー測定のシステムをベースとした最適化を進める。
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