2021 Fiscal Year Annual Research Report
励起子トランジスタの創成と励起子輸送の学理探求:情報担体へ進化する励起子
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21H01372
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
板垣 奈穂 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (60579100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白谷 正治 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (90206293)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 励起子トランジスタ / 励起子輸送 / 酸窒化物半導体 / スパッタリング / 量子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,オリジナル材料 ZAIONによる非局在型の「室温・長寿命励起子」の実現を目指し,①高精度フラックス制御スパッタによる化学量論組成 (ZnO)x(InN)1-xを有する ZION膜の作製,②ZION の高品質結晶成長成膜ならびに障壁層である ZnO膜との高品質ヘテロ界面の形成,③「外場による励起子輸送」の機構解明を行った.①については現在開発中の「高精度フラックス制御スパッタリング装置」をベースとし,これに O,N 原子数制御のためのラジカル源を重畳,さらに真空紫外吸収分光装置 よりそれら原子の絶対数密度をモニタリングすることで実現した.②については,基板の表面モフォロジーならびに極性の適切な選択により,ZIONという4元系材料において初めて,原子レベルで急峻なZION/ZnOヘテロ界面の形成に成功した.通常,基板の表面形状は高さ分布の二乗平均平方根 (RMS) 粗さで議論されるが,我々は,(RMSの3乗で規格化した) 三乗平均である分布の「歪度」が基板上に作製する薄膜品質を決定づけるキーパラメータであることを突き止めた.③については,次に,励起子トランジスタにおける励起子輸送現象の記述のため,デバイスシミュレーションを用いて電界の値を求め,外力のある場合の拡散方程式に代入することで,励起子の濃度分布を計算した.デバイス内の励起子輸送の定性的な記述には成功したが,一方で定量的には,従来報告されている励起子トランジスタ動作を記述するには至らなかった.今後は励起子の歳差運動も考慮した形でのドリフト速度を求めるなどして,外場による励起子輸送の機構解明を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は,代表者オリジナルのシーズ技術を背景に,中間状態としての準粒子として取り扱われてきた励起子を電子,光子に続く第3 の情報担体へと進化させるものである. まずは,その進化の鍵となる非局在型の室温・長寿命励起子を実現するべく,オリジナル材料ZAIONの高品質結晶成長ならびにZnO膜との高品質ヘテロ界面の形成を試み,現在までにそれに成功している.また「励起子輸送と外場の学理」に踏み込むべく,デバイスシミュレーションを用いて励起子トランジスタ内の電界の値を求め,外力のある場合の拡散方程式に代入することで,励起子の濃度分布を計算した.これにより,デバイス内の励起子輸送の定性的な記述に成功した. 今後は,上述の高品質ヘテロ界面を有するZAION量子井戸内に巨大ピエゾ電界を発現させることで,非局在型の室温・長寿命励起子を実現する.同時に,励起子の移動度や移動経路の詳細を調べ,励起子輸送機構の解明を実験的的な面からも行う.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず,ZION/ZnOならびにZnO/ZnMgO歪量子井戸による非局在型の室温・長寿命励起子の実現をめざす.非局在型の励起子は通常,電子と正孔を量子井戸に閉じ込めることで生成されるが,同時に電子と正孔の波動関数が空間的に重なるため再結合も生じやすく,短時間 (< nsec) で励起子が消滅する.そこで本研究では ZnO系材料の強い圧電性 (e33~1 C/m2) を利用して,量子井戸内に巨大ピエゾ電界を発現させ,電子と正孔の波動関数を空間的に分離する, 光出力時には逆方向の電界を印加).これによりミリ秒を超える長寿命化を実現する.ZIONやZnOは 30 meVを超える大きな励起子束縛エネルギーを有するため,室温での励起子生成も同時に実現する.寿命の測定は,歪量子井戸に励起光を照射し,ストリークカメラにより発光寿命を観測することで行う. また昨年度に引き続き,電界による励起子輸送メカニズムの解明に取り組む.昨年度は,デバイスシミュレーションを用いて電界の値を求め,外力のある場合の拡散方程式に代入することで,デバイス内の励起子輸送の定性的な記述に成功した.一方で定量的には,従来報告されている励起子トランジスタ動作を記述するには至らなかった.今後は励起子の歳差運動も考慮した形でのドリフト速度を求めるなどして,外場による励起子輸送の機構解明を目指す.
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Research Products
(38 results)