2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Controllable Myoelectric Arm Prosthesis Based On Electronic Motion Coordination and Reflex Action
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21H01379
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
葛西 誠也 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 教授 (30312383)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 筋電義手 / 組合せ最適化 / リザバー計算 / 運動組織化 / 反射応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、リザバー計算系のネットワークの複雑さと計算性能に関する解析、未確立であったリザバーネットワークの設計方法について理論的検討、および表面筋電をリザバー出力と見做した前腕運動推定能力の評価を行った。 複雑さをネットワークのモチーフ構造の多様性と解釈し、多様性につながるパラメータとして平均距離とクラスター係数に着目し、リザバー計算による時系列推論性能を評価した。物理実装を想定し実現可能なノード数20を仮定したリザバー層の解析により、その計算性能はネットワークトポロジにはほとんど依存しない一方で、辺密度には大きく依存し密度が高いほど計算性能に優れることが計算機実験で見出され、物理リザバーを構成するネットワークの設計指針が得られた。 前腕の表面筋電をリザバーノード出力と見做したリザバー計算系による手の運動推論を試みたところ、活動電位波形そのものの線型結合では推論精度が低いという結果となった。改善策として、シナプス積分発火に倣い活動電位の積分波形の利用を着想し、積分回路を実装した系を構築した。積分波形の線型結合で手の運動の学習を試みた結果、期待通り推論性能が向上した。これにより随意運動の高精度推論が可能になった。 独自の粘菌型最適化電子システム電子アメーバとして新たに迷路探索システムを実現した。生物粘菌に学んだ探索メカニズムであるが、瞬時に最短経路を発見可能である。さらに最短経路が寸断された場合は速やかに次の最短経路を見つけ出すことも実証した。さらに電子アメーバの挙動観察から、生物粘菌の様々な計算能力は代謝と身体変形機構の階層構造における関与する階層の組み合わせとリンクしている可能性があることがわかった。この点については今後検証を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リザバー計算系のネットワークの複雑さと計算性能に関する解析を行い、未確立であったリザバーネットワークの設計法(特に現実的に形成可能なノード数のネットワーク)の先鞭をつけることができた。ネットワークモチーフに着目した解析により、これまで報告されていたネットワークトポロジと計算性能の関係について理論的な裏付けを加えた。これらの成果は本研究のみならず昨今盛んに研究されているリザバー計算そのものの研究領域に資するものである。 表面筋電をリザバーノード出力と見做したリザバー計算の機械学習によって筋電位から身体部位の動作をよい精度で推論できることを実験的に示し、提案コンセプトが実証されたことは大きい。シナプス積分発火に着想を得た信号前処理によってさらなる推論精度向上の余地があることや、本来直接的に指の動作に関与しない前腕筋肉から指の動作を推論する可能性を見出すことができたことも重要な成果である。 一方、人工感覚フィードバック機構の研究進捗が計画よりも遅れている。 以上より(2)のように進捗を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、前年度に創出した前腕表面筋電位にもとづく生体リザバー計算による随意運動推論を、筋電義手制御に応用するために必要な技術の研究を行う。運動推論の精度向上のため、筋電位積分機構のパラメータ最適化を行う。また、リザバー計算の時系列信号推論能力が高いことから、これまで行われてきた随意運動の識別(動きの種類の同定)に加えて運動の強弱の推論を試みる。加えて、前腕筋電から指の動きを推論することを試みる。手の指の動作に直接寄与しないが、指を動かす際に前腕筋肉が補助的な動きをすることから推論できる可能性がある。さらに反射機能をリザバー計算に担わせることを検討する。ここでは義手に装着したセンサ信号をもリザバーの出力として扱う。これらの技術が可能になると筋電義手の制御性が格段に向上する。一方、人工感覚フィードバック機構の研究進捗が遅れているため取り戻す。これら結果を踏まえて筋電義手制御システムの設計に着手する。
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Remarks |
NHK Eテレ「サイエンスZERO」 にて研究成果の一部が紹介された(放送日 2022年11月13日(日))
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