2021 Fiscal Year Annual Research Report
下水処理プロセスを担う原生動物のメタン生成マイクロリアクターとしての代謝基盤解析
Project/Area Number |
21H01467
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
新里 尚也 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (00381252)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞内共生 / 原生動物 / 嫌気 / メタン / バクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、下水処理プロセスより分離培養に成功した数少ない原生動物株を用いて、その生物活性を支えていると考えられる共生微生物の役割について明らかにすることを目的としている。本研究では、昨年度までに宜野湾浄化センターより培養株を樹立した嫌気性繊毛虫である、Scuticocilliatia GW7株に見出された、α-プロテオバクテリアに属する細胞内共生体、ヒドロゲノソモバクター・エンドシンビオティカスの機能推定を目的として、共生体ゲノムのショットガンシーケンスを行ってドラフトゲノムを取得することに成功している。今年度は、リピート配列により環状化していなかった当該ゲノムの一部領域について、プライマー・ウォーキングを行い、827kbの完全長配列を得ることができた。当該ゲノムは多くの細胞内共生体で見られるようにGC含量が約40%とかなり低く、GW7株とかなり長期にわたって共生関係を築いてきた事が伺えた。また、アノテーションを行った結果、縮退したゲノムに721のタンパク質をコードしていることが示された。ヒドロゲノソモバクターのゲノム解析の結果については、昨年度、概要をまとめて論文として発表した(Shiohama, 2022)。 また、具志川浄化センターから培養化に成功した3株の嫌気性原生動物株について、18SリボソーマルRNA遺伝子による分子同定を行った結果、それらはいずれも下水処理プロセスから報告されている、メトプス・コントールタス、トリミエマ・フィンレイ、トリコミタス・spであることが明らかとなった。蛍光顕微鏡観察と超薄切片の電子顕微鏡観察の結果、メトプス・コントールタスとトリミエマ・フィンレイにはメタン生成菌が細胞内共生している様子が伺えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共生バクテリアのゲノムは縮退の途上でリピート配列を多く含む場合があり、完全長のゲノム解析が困難なことがある。しかしながら、ヒドロゲノソモバクターのゲノムについては、イルミナ・シーケンサーを用いたショートリードでの解析と、一部領域のプライマー・ウォーキングで完全長のゲノム解析ができ、予想したより迅速に解読が行えた。 また、具志川浄化センターから新たに取得した原生動物株も、継代培養を繰り返す過程で3種の原生動物株をそれぞれ純化することができた。通常、原生動物株の純化には限界希釈やマイクロマニピュレーションを用いて単一細胞から培養株を樹立する必要があり、この点も非常に幸運で順調に研究が進捗していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は完全長ゲノムの情報が得られたヒドロゲノソモバクターについて、その宿主であるGW7株における共生の意義を解明する必要がある。具体的には、ゲノム情報より機能的な代謝系を抽出し、基本的なエネルギー代謝や代謝産物が宿主原生動物、あるいは共存するメタン生成菌の活性に寄与する可能性について、詳しく解析する必要がある。ヒドロゲノソモバクターは、GW7株の水素生産オルガネラであるヒドロゲノソームに密着して存在しており、水素をエネルギー源としている可能性がある。しかしながら、水素は共存するメタノレギュラ属のメタン生成菌のエネルギー源でもあり、基質の競合が生じる可能性がある。こうした競合が宿主原生動物にとって代謝上のメリットをもたらす可能性もある一方で、全く予想外の相互作用によってこの3者間の共生が成り立っている可能性もある。今後はゲノム情報の解析をとおして、これらの点を明らかにするために具体的な検証を行う予定である。
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