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2022 Fiscal Year Annual Research Report

Architectural study on ancient wooden technology that searches from the wooden boat in Egypt

Research Project

Project/Area Number 21H01520
Allocation TypeSingle-year Grants
Research InstitutionHigashi Nippon International University

Principal Investigator

柏木 裕之  東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (60277762)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2025-03-31
Keywords古代エジプト / 木造船 / 古代木造技術 / クフ王
Outline of Annual Research Achievements

劣化しにくい石材やれんがと異なり、木材は朽ちやすく失われやすい。そのため今も残る古代建築の大部分は石造やれんが造で、木造は柱根など断片に留まる。残存状況の違いは研究にも影響し、遺構として残る石造から失われた木造を類推する方法が主流である。だが本来別々の発展を遂げた石造と木造を、一つの流れの中で捉えようとする態度には問題も多い。木造遺構の実証的な研究が難しい中にあって、エジプト、クフ王の大ピラミッド南脇から発見された2隻の木造船は、4500年以上前の木材がほぼ完全な形で残る、世界的にも貴重な実物資料といってよい。
東西2隻の船は解体された状態で埋設され、このうち西側の船(クフ王第2の船)は、日本・エジプト合同調査隊により部材が取り上げられた。研究代表者は復元責任者としてこのプロジェクトに当初から参画し、研究協力者と共に部材の実測を進めた。本研究は実測結果をもとに、解体された木造船の当初の姿を描くと共に、木材加工や接合方法など古代の木造技術を実証的に検討することを目指すものである。取り上げられた部材は1600点を超え、これまでに9割近くの実測を完了した。本研究を遂行するための準備が整ったといえる。
また比較の視点から東側の木造船(クフ王第1の船)についても研究を進めた。この船は1950年代に発見され、再組み立てが完了している。だが新たに西側の船が加わったことで、復元像を再検討することが可能となった。また第2の船固有の部材も発見され、第1の船とは異なる姿であったことも判明しつつある。両船の役割や意味を包括的に検討することも大きな課題である。
この他、木材の取り上げが完了したことを受けて、部材を納めていた竪坑の記録や観察、掘削工程の復元考察も試みた。更に部材は当初の船の姿を意識しながら埋設された可能性が高く、部材配置は船の復元考察を進める上で有益な資料となることが明らかとなった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究代表者は、2022年10月から11月、同年12月から2023年1月、更に2023年3月の計3回、延べ90日間ほど現地で実測調査を行った。また2021年度に予定していた研究協力者の渡航は、現地で新型コロナウィルスが蔓延していたため翌年度への繰り越し措置をとり、2022年度に現地調査を実施することができた。これにより船体部材に刻まれていた文字や記号の調査、分析が進んだ。
また船体を構成する大型部材は、これまで十分な作業スペースを確保することが難しく、分割した写真を合成する方法に限られていたが、2022年度は大型作業テントの移設が完了し、実測作業を行うことが可能となった。更にこれら長部材に直交する肋骨部材についても調査を進め、船体を構成する全ての部材を実測することができた。
船は3次元の曲面で構成された複雑な形状をとる。当該船のように複数の木材を組み合わせた大型船の場合、2次元の実測図面を3次元の立体物として扱う必要があり、2022年度は2隻の木造船の10分の1模型を製作した。全体模型を作ることによって、右舷と左舷をつなぐ部材のおさまりや規模、役割を検討することができ、また刻まれた記号の配列から肋骨の位置などを特定することができた。さらに模型製作は、造船工程を追体験する作業ともなり、建造上必要な部材が欠落していることが知られた。これは船が改変された可能性が高いことを示しており、注目される。こうした模型製作によって浮上した検討課題や確認事項について、現地で再検証を実施した。
本研究では木造船の建築技術の解明とともに、木棺や家具などの比較的小規模な木製品の加工技術やおさまりを検討することも課題として挙げている。2023年2月から3月にエジプト、ダハシュール北遺跡の発掘調査に参加し、岩窟墓の内部から出土した木棺などの木製品について、木材の専門家とともに分析を実施した。

Strategy for Future Research Activity

取り上げられたクフ王第2の船の部材は1600点を超え、これまでに1500点近くの実測を終えた。今年度、残る部材の実測を進め、全点の完了を目指す計画である。またこれまでの調査から、船の全体像を掴むことができ、東西2隻の木造船は多くの点で類似していることが分かってきた。一方でどちらかの船にしか備えられていない部材も認められた。例えば第2の船では第1の船にはない櫂が多数見つかっており、櫂を設置するための装置や漕ぎ手のための座面などを検討し、復元図を描く作業が急務である。2隻の形状の違いは、それぞれの役割や意味の解明に結びつく重要な手がかりであり、壁画や模型資料などを援用しながら2隻の関係性を探る計画である。
またこれまでの分析から、2隻は当初、別の形の船として作られ、改変されたという仮説を得るに至った。この仮説の実証を目指し、不自然なおさまりや当初材と改変部材の峻別などを進め、初期の姿と改変後の二種類の復元図を作成する計画である。
これまで実測した資料類の公表も重要な課題である。既にまとまった部位ごとに概報を発行してきたが、全点の実測が終わるまで最終的な結論は留保してきた。今年度で実測はほぼ完了する見込みのため、部材の報告書公刊に向けた準備を精力的に進める計画である。
新たな課題も浮かび上がった。その一つが木材の木取りである。一本の丸太からどのように材を取ったのか、また木表・木裏、元・末などを意識した使い方をしていたのかといった点について、年輪年代学の専門家と共同で調査をし、探る計画である。
第1の船は現在建設中の新博物館に展示されることが決まり、本年度から来年度にかけて本格的に整備される。第2の船の調査によって第1の船のおさまりに再検討を要する箇所も見つかった。本研究成果を第1の船の展示に活かすべく、現地博物館スタッフと積極的に情報を交換していく所存である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2022

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 船坑の特徴から探るクフ王第2の船の当初計画2022

    • Author(s)
      柏木裕之
    • Organizer
      日本オリエント学会第64回大会

URL: 

Published: 2023-12-25  

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