2023 Fiscal Year Annual Research Report
水-金属ハイブリッド推進機内の凝縮性粒子の発生機構解明と推進/環境性能の最適化
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21H01526
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小泉 宏之 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (40361505)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水 / 超小型推進機 / マグネシウム / 燃焼 / 凝縮性燃焼生成物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、水/金属燃焼ハイブリッド推進機の実現にある。このためには、推進性能と環境適合性の同時最適化が必須であり、いずれも凝縮性燃焼生成物(CCP: Condensed Combustion Products)の低減が鍵となる。そのため、低圧水蒸気とワイヤ金属(マグネシウムあるいはアルミニウム)の燃焼スラスタにおけるCCP発生機構を解明すると共に、推進性能との相互作用を解明する必要がある。これには実験的測定が不可欠であり、本研究はCCPの発生メカニズム解明と推進性能への影響解明により構成される。 本年度は、ワイヤ燃焼時に生成される大型のCCPに関して、生成抑止のための機構についての研究を実施した。マグネシウムと水が燃焼する際に主として生成される酸化マグネシウムは、その燃焼温度において固相であり典型的なCCPである。同物質の生成自体は燃焼エネルギーを解放するためには避けられないものであるが、これまでの燃焼実験においては、酸化マグネシウムがワイヤ先端に付着し成長し大型化(数cmにおよぶ)ていく様子が確認されている。本研究では、この成長を阻害する方法として、ワイヤに高周波数振動を加えることで、酸化マグネシウムを成長初期にワイヤから切り離し微粒化させる手法を提案し、その概念実証を実施した。燃焼および加振アクセスが容易である大気解放系を用いて、空気を酸化剤として実験を行った。その結果、適切な周波数印加により酸化マグネシウム微粒化する様子を確認した。一方で、周波数あるいは振動強度によっては、燃焼部(高温部)が切り離されることにより燃焼が終了する現象も確認され、今後の課題となった。また、実際に生成される推力の測定のため、ターゲット式の推力測定振子を設計・製造し、真空中での作動試験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、当初想定よりも大型のCCP生成が明らかになり、実機応用に向けてその対処方法が最重要課題となっている。このため、物理解明および推進性能との関連の点では、計画より遅れた進行状態である。一方で、対処方法として高周波加振を提案し、実際にその概念実証に成功したことは大きな進捗と言える。実際、この技術について、東京大学TLOと調整を進め、特許出願を行うに至った。このため、トータルとしては概ね順調と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、高周波加振によるCCP微粒化方法について、長時間燃焼と微粒化を実現する最適な作動点を探していく。また、これまでの空気燃焼から脱却し、本来の酸化剤である水による試験を進める。長時間燃焼と微粒化が両立できれば、推進剤への効率的な熱伝達が期待されるため、推力測定(装置は2023年度に構築済み)を実施し、推進性能の評価を行う。
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