2023 Fiscal Year Annual Research Report
Characteristics of UV degradation on high performance yarn and its application to characterization of fabrics used for protective clothings and industrial materials
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21H01571
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
若月 薫 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60408755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森川 英明 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (10230103)
鮑 力民 信州大学, 学術研究院繊維学系, 特任教授 (10262700)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高性能繊維 / 防護服 / 産業資材 / 耐候性試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
紫外線照射時に経糸・緯糸が交差した際の影の影響について,本年度はトライアルでサンプル種類を限定し,走査型電子顕微鏡による外観を観察した.紫外線ばく露の影となる裏面は,Q = 34, 340 MJ/m2においてm-Aramid 100 % とp-Aramid 100 %の繊維表面に変化は見られなかった.つまり,紫外線ばく露による繊維表面の劣化は糸の裏まで及んでいないと考える.糸軸方向に最大荷重まで緩やかに荷重を加えた際,紫外線ばく露面の繊維は紫外線劣化に伴う欠陥の増加により最大荷重に至る前までに破断を生じやすい.よって,最大荷重に近い荷重を加えた際,紫外線ばく露の影となった繊維にのみ応力を生じる.したがって,紫外線ばく露したアラミド繊維の引張強度の低下は糸のみかけの断面積の減少とみなせると考える.一方,繊維方向引張強度を正確な予測モデルの提案は,アラミド繊維の引張強度について深く理解する必要がある.アラミド繊維は脆性材料で欠陥の存在に起因して応力集中が欠陥近傍に発生する.脆性材料の破断強度分布は,一般に最弱リンクモデルに基づくワイブル分布に従うと知られ,アラミド繊維も同様に整理できると考えた.紫外線ばく露した糸の破壊要因を紫外線による欠陥と仮定し,トライアルとしてm-Aramid 100 % 及びp-Aramid 100 %の欠陥数の変化による糸の引張強度及び強度のばらつきへの影響を2母数ワイブル統計モデルの各母数を比較し評価した. 尺度母数は紫外線ばく露量の増加に伴う欠陥数の増大により減少した.また,番手の増減にともなう尺度母数は変化しなかったことから,異なる番手に生じる単位体積当たりの欠陥数は変化しないと考察できた. この結果により,本研究でターゲットする全てのアラミド混紡糸・織物に劣化モデルが適用可能であるという確信を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初計画していたとおり,アラミド紡績糸の構造が紫外線ばく露による強度劣化へ与える影響を調査し,その要因は走査型電子顕微鏡及び素材の脆弱性をワイブル分布で考察するトライアルをサンプル種類を限定して行った.また,本研究で使用してきた糸は双糸であるが,糸番手(糸の太さ)に加え,紫外線に弱いp-Aramidをm-Aramidで包む二重構造糸(カバリングヤーン)の効果に対する解析へ手を広げ,今まで得られている数式モデルがどの範囲まで適用可能か検討した.このトライアルは本来,研究計画には無かったが,得られた結果は糸に対する紫外線ばく露の引張強度が得られれば,織物における引張強度の劣化は予測できると確認できた.今後の紫外線に弱い素材を糸として用いる際の設計手法へ一石と投じることができた. アラミド繊維としての紫外線に対する脆弱性をワイブル分布で評価することは,以前にも行われていたが,糸や織物においての適用性は報告が皆無であったことから,糸・織物というマクロスケールの問題を繊維に生じる欠陥,つまりミクロスケールでも考えることができたことは大きな成果であった. R5年度の研究成果は,次年度事業への足がかりへとつなげることができたと考えられ,これらの分析をもとに,本研究でターゲットとする「あらゆるアラミド混紡糸・織物」に対して,本研究で導かれた劣化モデルと適用できるか,継続して解析を進める.
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Strategy for Future Research Activity |
R6年度はR5年度で実施したトライアル試験を本研究の最終ターゲットとする「あらゆるアラミド混紡糸・織物」に対して,本研究で導かれた劣化モデルと適用できるか,その背景となる繊維に生じる欠陥が破断へ至らせているかを継続して解析を進める.具体的にはm-Aramid及びp-Aramid糸構造,糸番手及び目付の異なる糸及び織物の引張強度を測定し,引張強度に対する繊維混紡率,糸構造,糸番手及び目付の影響を明確にする.さらに,試験結果から算出した強度保持率から,紫外線劣化した糸の引張強度を推定できるモデルを作成する.加えて,このモデルと織物の強度劣化モデルとを比較し,あらゆる混紡糸及び異なる糸構造であっても織物の強度低下を推定する方法を提案する. 使用済み防火服における各部位の引張強度を測定し,防護服・産業材の経年劣化予測に対する強度劣化モデルの実用化に向けた課題を調査する.さらに,織物の強度劣化モデルから使用済み防火服の使用年数を推定する.具体的には,使用済み防火服を回収し,各部位における引張強度を測定し,防護服・産業材の経年劣化予測に対する強度劣化モデルの実用化に向けて考慮すべき点について調査する.また,強度劣化モデルを応用し,使用済み防火服の使用年数を推定し,防火服の管理方法について考察する.
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Research Products
(5 results)