2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H01606
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
宮内 直弥 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, 主任エンジニア (70451416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村瀬 義治 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主任研究員 (10354193)
板倉 明子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, グループリーダー (20343858)
矢ヶ部 太郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主幹研究員 (80354364)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 水素 / 水素可視化 / 構造材料 / 腐食 |
Outline of Annual Research Achievements |
■本研究の目的は,薄膜中を透過する水素を可視化するオペランド水素顕微鏡(以下,本装置)を用い,金属材料中の水素透過を高い空間分解能で可視化することで,局所的に組成や構造が異なり水素脆化の起点となるといわれている溶接箇所や腐食箇所での水素挙動を解明することである.本装置では従来,水素検出に利用している電子衝撃脱離(ESD)で放出される粒子のうち,水素イオンのみを検出している.本研究では新たに反応過程で現れる中性活性水素を検出することで,腐食による表面組成変化が実験データに及ぼす影響を除去し,化学組成・構造・歪が複合的に作用する水素透過挙動の影響因子を一つずつ分離する. ■装置開発部分については,本研究計画の中心である中性活性水素を検出するレーザーアシストシステムを設計した(スペクトラフィジックス社 EONE-HPおよび光学システム).レーザー導入窓からの迷光対策のために,レーザーシステム全体を暗室化し,本装置へと取り付けた.現在,光学レンズ系を用いたアシストレーザー導入に向けて調整を行なっている.アシストレーザーを導入すると,従来の試料ホルダーおよびイオンレンズ系では対応ができないため,新型の試料ホルダーおよびレンズシステムを設計し構築した. ■計測試料については従来のステンレス鋼の計測では水素透過に非常に時間がかかるため,本年度は水素吸蔵材料としても知られるPd薄膜を用い実験を試みた.その結果同厚さ程度のステンレス鋼に比べ,効率良く水素が透過し可視化することに成功した.また標準コンダクタンスエレメント(SCE)を用い,計測水素イオンの定量化実験を行い,SCEからの供給水素の可視化に成功した.これらの成果は2021年日本表面真空学会学術講演会にて発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活性中性水素計測のためのレーザーシステムの設計および装置への接続が完了している.同システム導入のために必要になった試料ホルダー等の改造も完了した.また本年度の目標の一つであった試料の選定について,水素吸蔵材料としても知られるPd薄膜を用いた実験を行った.同厚さのステンレス鋼に比べ,効率良く水素が透過し可視化に成功.一方でPd薄膜が効率的に水素を透過するため,一次側水素の急激な減圧が起きることが判明した.なお,この可視化結果と同試料のEBSD像を比較したところ結晶方位による明確な違いは観測されなかった. また,計測水素イオンの定量化にも関わるSCEを用いた実験を行った.これは一次側水素圧力を減圧し一定圧力として供給する事が可能な製品で,一定圧力下での水素の可視化に成功し,一次側水素圧力とESD信号との直線性を確認した.これらの成果の一部を学会にて発表済みである.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では,レーザーシステムの稼働を目指す.電子衝撃脱離によるイオン化,中性化は試料近傍で起こるため,レーザー光を試料近傍へと導く必要がある.試料に照射された場合レーザーアブレーションが起こるため,試料とレーザー光および電子線プローブの高精度でのアライメントが必須である.Pd薄膜を試料に用いた実験では透過量が大きく,一次側水素圧力の減少が起きた.これは透過水素の減少にも繋がる.そのため,結晶粒径の比較的大きな(100-200um)Pd膜を採用する.これは結晶粒界の影響を小さくすること,試料厚さ方向に対して単一粒であることを期待するためである.また一次側水素ガスラインの改良を行う.具体的には水素貯蔵タンクの大型化および水素圧力のモニターできるよう改良する.
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