2023 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ分光エリプソメータを用いた6G用低損失誘電材料の測定と開発
Project/Area Number |
21H01619
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
保科 拓也 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (80509399)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | テラヘルツ / 6G / 誘電体 / 誘電損失 / エリプソメトリ |
Outline of Annual Research Achievements |
第6世代移動体通信システム「6G」は様々な社会問題の解決や新たな価値の創出に利用されるであろう未来技術である。6Gを構築するにあたり高周波フィルタ用の低損失誘電体材料が必要であるが、6Gの周波数帯域(100 GHz超の帯域)で利用できる適切な材料は未だ見出されていない。本研究では、独自技術であるテラヘルツ分光エリプソメータシステムを用いて、6Gの高周波フィルタ材料として応用が期待される結晶、ガラス、コンポジット、結晶化ガラスの複素誘電率を広い周波数帯域で測定する。また、100 GHz帯での誘電率・誘電損失の起源を定量的に明らかにする。 該当年度は前年度に引き続き、テラヘルツ分光エリプソメータシステムを用いて様々な材料の複素誘電率を測定し、6Gの周波数帯域で利用できるような誘電体材料の探索を行った。特に、トリルチル型化合物の多結晶体(セラミックス)では、元素置換によりルチル型構造に近付けるような材料設計を行うと、誘電率の温度係数をゼロに近付けることが可能であることがわかった。また、第一原理フォノン計算や計測したTHz誘電スペクトルの解析により、誘電率の温度係数がゼロに近づく原因を明らかにした。誘電損失も同時に低減可能であることから、高周波向け誘電材料として有望であることを見出した。また、無機フィラーを分散させたポリマーコンポジット材料のTHz誘電スペクトルを測定し、THz帯では無機フィラーの粒径等がコンポジットの誘電率に影響し、コンポジットで一般に適用されるような混合則で説明できないことが明らかになった。今後、誘電特性の起源を明らかにしていくことが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自のシステムを用いてテラヘルツ帯域の誘電特性評価を行い、様々な結晶質材料やコンポジット材料の誘電メカニズムについて新しい知見を得ている。誘電率の温度係数の小さな材料や低損失誘電体材料の候補を特性の起源と共に具体的に示すこともできており、研究計画は順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
既にガラス系の材料に関しては、ガラス構造とTHz帯の誘電特性の関係を明らかにしつつある。また、ルチル型のTiO2結晶を析出させた結晶化ガラスにおいて、TiO2結晶の析出量を変化させることによって誘電率の温度係数を制御できることが明らかになっている。この材料を用いて、マイクロストリップライン型の周波数フィルタを試作し、候補材料の有用性を示す。 一方、無機多結晶(セラミックス)やセラミックスポリマーコンポジットを用いた低損失材料の開発にも引き続き取り組む。特にコンポジット材料では、フィラー材料の誘電率、粒径、微構造等で全体の誘電率を制御できるため、それらの起源解明とともに、誘電率の温度依存性や機械的性質等の観点で優れた6G向けの材料を提案する。得られた成果は、国内外の学会、国際論文誌等で報告する予定である。
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