2022 Fiscal Year Annual Research Report
Reorganization of metabolic pathways by controlling iron utilization mechanism
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21H01729
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
蓮沼 誠久 神戸大学, 先端バイオ工学研究センター, 教授 (20529606)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 代謝工学 / 鉄硫黄クラスタータンパク質 / 酵母 / メタボロミクス / 合成生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,鉄硫黄クラスタータンパク質(Fe-Sタンパク質)が酵母細胞内で形成される過程を解析し,その機能発現量を制御するメカニズムを明らかにするとともに,タイプの異なる複数のFe-Sタンパク質を実験対象として一般化されるメカニズムを同定し,代謝工学に応用することを目的としている。従来の遺伝子工学ではFe-Sタンパク質の比活性を3倍以上向上させた例は無く,本研究ではまず,酸化的キシロース資化経路のボトルネック酵素であるキシロン酸デヒドラターゼ(XylD)を対象に比活性の向上を試みる。具体的には,XylDホロタンパク質形成に関与する可能性のある鉄代謝関連因子,硫黄代謝関連因子,鉄硫黄クラスター形成関連因子の発現を欠損あるいは強発現させた状況でXylD遺伝子を強発現させる。続いて,この株の詳細解析を行うことで,Fe-Sタンパク質の機能発現メカニズムの解明につながる数多くの新規データ創出に繋げる。メカニズムの解析と検証は代謝工学的手法により行うが,メタボロームの時間変化解析等から鉄硫黄クラスタータンパク質機能発現につながる因果関係の抽出を目指している。Caulobacter crescentus由来XylDの実験からは,Tyw1の発現強化とBol2の欠損の組み合わせで相対的に最も高い活性を示したことから,2Fe-2S型Fe-Sタンパク質の機能発現には,細胞内への鉄イオンの取り込みが関与していることが強く示唆された。XylDと同じタンパク質ファミリーに属するホスホグルコン酸デヒドラターゼ(PGD),タンパク質ファミリーの異なる4Fe-4S型のFe-Sタンパク質である4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブテニルピロリン酸シンターゼ(IspG)や4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブテニルピロリン酸レダクターゼ(IspH)に対しても,機能発現メカニズムを解析する研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鉄硫黄クラスター(Fe-S)タンパク質であるCaulobacter crescentus由来キシロン酸デヒドラターゼ(XylD)の遺伝子を出芽酵母内で発現させ,その上で種種の鉄硫黄クラスター形成関連遺伝子の発現量を改変した組換え酵母株ライブラリーを構築してきた。株間のXylD活性の違いを解析したところ,Tyw1の発現強化やBol2の欠損,その組み合わせで相対的に高い活性を示していることから,2Fe-2S型Fe-Sタンパク質の機能発現には,細胞内への鉄イオンの取り込みが関与していることが強く示唆された。XylDと同じIlv/ED dehydratase familyに属するFe-Sタンパク質であるホスホグルコン酸デヒドラターゼ(PGD)に着目し,その遺伝子を出芽酵母に導入した。PGDはEntner-Doudoroff経路を構成する酵素であり,機能発現すれば一次代謝経路の改変が期待できるが,酵母内で機能発現できないことが代謝工学上の問題となっていた。これに対し,tTyw1(鉄硫黄クラスター結合部位を除いたTyw1)の過剰発現とBol2の破壊を行う「鉄代謝改変システム」を駆動させたところ,酵素活性を認めることができた。また,4Fe-4S型のFe-Sタンパク質として4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブテニルピロリン酸シンターゼ(IspG)および4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブテニルピロリン酸レダクターゼ(IspH)を選定し,酵母内にそれらの遺伝子を導入した。これらは非メバロン酸経路の構成酵素であり,機能発現すれば産業用途のあるイソプレノイド高生産への展開が拓ける。この株をベースに鉄代謝改変システムの効果を今後詳細に解析していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は外来性のFe-Sタンパク質を導入した酵母のメタボローム解析,代謝解析を進め,Fe-Sタンパク質の形成と酵母代謝の関係性を分子レベルで詳細に調べていく。XylDやPGDに対してはホモログによる活性の違いや機能発現が代謝システムに及ぼす影響を調べる。IspG/IspHに対してはリコペン等のイソプレノイドの生合成経路を同時に導入し,物質の生産に及ぼす影響を調べる。また,鉄イオンだけでなく硫黄にも焦点をあて,培地への添加が及ぼす影響を調べる。このように収集するデータを基に,機能発現したFe-Sタンパク質と鉄硫黄代謝を組み込んだ代謝モデルの構築を進める。本研究は,酵母の鉄硫黄クラスタータンパク質形成に着目し,そのメカニズム解明に取り組むとともに,代謝工学に応用するものである。鉄代謝を改変した組換え酵母株ライブラリーを実験材料に用い,多様な鉄硫黄クラスタータンパク質の形成に共通するメカニズムを特定した後,鉄代謝及び硫黄代謝を含む新規代謝モデルを構築し,中枢一次代謝経路の再編と物質生産を通してモデルの検証を行う。本研究で新たな原理を導出することで,将来的には,補欠分子族結合型酵素の形成メカニズムの理解も進み,酵素機能発現の制御を包含した代謝工学の発展に寄与することが期待できる。
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Research Products
(13 results)