2021 Fiscal Year Annual Research Report
液相プロセスによる14族シート創製と高移動度化に向けたマルチプローブ局所伝導計測
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21H01813
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久保 理 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70370301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田畑 博史 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (00462705)
中山 知信 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 副拠点長 (30354343)
片山 光浩 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (70185817)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ゲルマナン / トランジスタ / 移動度 / イオン交換 / スタナン / マルチプローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は水素化ゲルマナン(GeH)をチャネルとした電界効果トランジスタ(FET)の特性について、温度、およびソース・ドレイン電極の金属種類を変えて系統的に調査した。その結果、金属によって実行的な移動度が異なり、Ni電極がn型、p型双方の動作において優れていることが分かった。また、移動度の温度依存性では室温付近からの急激な移動度低下が起こることを発見した。 従来のゲルマナンはカルシウムゲルマナイド(CaGe2)を低温の濃塩酸に数日浸すことで、溶液中でCaイオンとHイオンの交換反応が起こし、ゲルマナンを形成する。しかし、エネルギー分散型X線分光(EDX)測定から水素ではなくCl終端となる欠陥が発生することがわかっており、これがFET特性に影響を与えていることが懸念されていた。そこで今回、イオン交換樹脂を用いたプロトン交換反応を用いたゲルマナンの作製を行った。EDX測定の結果、残留Clの低減が確認され、X線回折(XRD)、ラマン散乱測定でも従来法と同等以上の品質であることを確認した。 また、錫の水素終端シート・スタナンは、作製報告がないため、この作製を試みた。作製方法はゲルマナン同様、濃塩酸を使った溶液プロセスを用い、母材料にはCaGe2同様のAlB2型構造を持つBaSn2を用いた。しかし、現在までのところ母材料の錫化バリウム(BaSn2)の純度が低いことから、シートの作製には至っていない。 一方、本研究では多探針走査プローブ顕微鏡(SPM)を用いて、ゲルマナンの欠陥などの局所構造と移動度との相関を解明することを目的としている。本年度は簡易型の走査電子顕微鏡を導入し、探針操作を容易にする予定であったが、資材調達の遅れから、研究期間を延長し、2022年8月に導入が完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初3月完了を予定していた多探針走査プローブ顕微鏡への簡易型の走査電子顕微鏡の導入が、年度を超えた2022年8月にずれ込んだことは計画の遅れと言わざるを得ない。また、錫の水素化シート・スタナンについては、その成否自体の判断に至っておらず道半ばである。一方で、水素化ゲルマナン(GeH)のトランジスタ特性評価については、電極金属をNiとすることがよいとわかり、また移動度の温度依存性についてもあらたな発見があった。この研究は応用物理学会で発表するなど、一定の進展が得られたと考える。また、イオン交換樹脂を用いた新しいGeHの作製法も確立し、こちらも応用物理学会で発表するに至った。そのトランジスタ特性については、残念ながら従来作製法に比べて明らかに上回っているというデータは得られていないが、ゲルマナン研究にあらたな技術を導入できたと言える。 以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲルマナンをチャネルとした電界効果トランジスタ(FET)の作製については、イオン交換樹脂を用いた手法によっても劇的な移動度向上が得られていない。本研究のテーマの一つは、この原因をマルチプローブ計測で探索することである。予定より遅くなったが、今後、欠陥などの移動度低下要因の調査を進めていく。 また、カルシウムゲルマナイド(CaGe2)を濃塩酸ではなくヨウ化メチルをに浸すことでメチル基終端のゲルマナン(GeCH3)が創製され、250℃まで安定であることが報告されている。今後は、GeCH3に対してもFET特性の温度依存性計測を行い、移動度をはじめとした特性を調査していく。 また、錫の水素終端シート・スタナンについては、母材量であるBaSn2の高純度化が必要であり、引き続きその作製を試みていく。ただ、スタナンの魅力である、電界によりバンドギャップが変化する点については、従来から存在する材料でも最近報告されつつある。その一つが二酸化バナジウム(VO2)であり、従来は温度により金属―絶縁体転移(MIT)が起こるとされてきたが、電界によってもMITが起こることが報告された。そこで、今後はVO2をチャネルとしたFET作製にも取り組んでいく予定である。
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Research Products
(8 results)