2022 Fiscal Year Annual Research Report
リチウムの海水からの回収を目指した新規吸着剤の開発
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21H01871
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡部 弘高 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90221142)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リチウム / 資源枯渇 / 高分子ゲル吸着材 / 資源捕集 / イオン吸着 / 希薄元素 / 海水溶存資源 / 海洋エネルギー資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
カーボンフリー社会を実現し電気エネルギーを有効に使うために蓄電池は重要であり、安全で高性能な蓄電池が求められている。現在蓄電池の材料として使われているリチウムは、今後主役となると考えられている全固体電池でも重要であり、その元素番号の小ささから蓄電池応用でこれ以上の性能を発揮できる元素が現れることはないと考えられるので、リチウムを確保することが重要である。しかし陸産リチウム資源分布は偏在しており、日本が将来的にリチウムを確保できるかは不透明である。そこで、海水中に稀薄ながら大量に溶存しているリチウムを回収する新規吸着剤を開発し、リチウム資源の確保手段を確立することが本研究の目標である。 そこで今年度は吸着基としてクラウンエーテルを用いて多元素溶存液に浸漬した場合、リチウム単元素に比べてリチウムの吸着量が変化することから、リチウムと他1元素の2元素溶存液で吸着の競合について調べている。今のところ明確な競合を示した元素はないが、低濃度では吸着基の競合が起こらない可能性があるので、より高濃度における検証が必要であると考えている。 また今年度は吸着材としてアガロースゲルがリチウムに対して選択的吸着を行うことを実験的に見出した。アガロースゲルはアガロースを水に溶かすだけで比較的強固なゲルを作製でき、生分解性でもあるので、実用化には適していると考えている。選択性の原因については量子計算の結果からアガロースにもある環状構造ではないかと考えている。今後吸着効率などを評価して詳細を調べる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年導入したワークステーションによって量子化学計算を比較的高速に実行できるようになった。量子化学計算には膨大な時間が必要で、新型ワークステーションと言えど相当の時間が必要であるが、実験をする前後に様々な知見を得ることが出来るようになったことで、見通し良く研究を進めることが出来ている。 また、実験検討によってクラウンエーテル以外に環状構造を持つアガロースがリチウムに対して選択性を示すことを見出したことは大きな前進であった。 以上の様に、計算と実験で当初計画に沿っておおむね進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はクラウンエーテル使用時のリチウムの吸着と競合する元素を明らかにし、そのメカニズムを調べることによって、リチウムの吸着効率を高める方法を模索する。また、アガロースについてその吸着特性を詳細に調べ、量子化学計算を併用することによってリチウムの選択性の原因についてより詳しく理解することを通して吸着効率の向上を目指す。
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