2021 Fiscal Year Annual Research Report
Conversion of magnetic and electrical properties of coordination polymer magnets by a combined external field of light and guest adsorption
Project/Area Number |
21H01900
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高坂 亘 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70620201)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 多孔性配位高分子 / 金属有機複合体 / 多孔性磁石 / 物性変換 / ホストゲスト電荷移動 / 分子磁性体 / 磁気相変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は光照射を行うための光源の購入や,赤外分光測定用クライオスタットの設計・発注を行うとともに,測定対象となる[Ru2]-TCNQ型多孔性配位高分子磁石の開発や物性測定に取り組んだ. 新たなゲスト応答性[Ru2]-TCNQ型多孔性磁石として,[Ru2(2,6-F2PhCO2)4(BTDA-TCNQ)]を見出した.本化合物では,2つある[Ru2]電子ドナーの1つから,BTDA-TCNQ電子アクセプターへと電荷移動が起きており,結果として合成直後の溶媒和相は84 Kで反強磁性相転移を示した.脱溶媒によっても構造や電子状態に大きな変化は無く,脱溶媒相もまた90 Kで反強磁性相転移を示した.この脱溶媒相をヨウ素蒸気下にさらすと,6日ほどで反強磁性相転移がかんそくされなくなり,常磁性状態へんと変化した.真空下での加熱処理により吸着ヨウ素を脱着させることにより,化合物は再び反強磁性相転移を示した.また,ヨウ素吸着に伴い電気伝導度が2桁ほど向上した. 吸着前後での結晶構造を精査した結果,BTDA-TCNQの電子状態がヨウ素吸着の前後で変化し,ヨウ素分子は三ヨウ化物イオンとして取り込まれていた.これは,ヨウ素の吸着に伴い,ホストゲスト間で酸化還元反応が起きていることを示している.反応の結果,BTDA-TCNQ上からスピンが消失し,磁気相互作用パスが分断されたために,磁気秩序のON-OFF制御が実現している.ホストゲスト間の直接的な電子授受により駆動する可逆な磁気相変換は世界初観測であり,化学的刺激により駆動する分子デバイスの新たな駆動原理の一つとして今後の発展が期待できる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の目標は光照射下における分光測定・磁気測定系の立ち上げと,実際に光照射下における磁気測定を開始する事であり,そのために光照射用のレーザー光源と,分光測定用のクライオスタットを購入した.しかしながら,Covid-19による工場の生産体制の立ち遅れなどの影響を受け,光源・クライオスタットが納入されたのが昨年末とかなり遅くなってしまったこと,および,研究所の極低温センターの液化機更新作業により,昨年末から4か月ほど液体ヘリウムの供給がストップしてしまったことが重なり,光照射下における磁気測定や極低温での測定について進めることができなかった.前項で述べた通り,目標項目の一つである[Ru2]-TCNQ型D/A-MOFの物質開拓に関しては,一定の成果が得られており,成果として論文報告を行っている.また,光照射実験の予備的な実験として行ったラマン分光実験においても,ガス吸着と光照射の複合効果について前向きな結果が得られている.しかしながら,低温実験および光照射実験の立ち遅れについては無視できないことから,やや遅れていると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き,多重安定性を示す多孔性磁石の物質開拓を進めるとともに,化学的外場による物性制御法の可能性を追究していく.昨年までの研究において,有望な化合物は他にも見出されているため,今年度も引き続きそれぞれの細部を詰めていく.また,あらたな吸着質に対する応答の検討も行っていく.昨年末より停止していた液体ヘリウムの供給が再開したので,冷媒を使用する分光・物性測定装置の再立ち上げを行い,しばらくストップしていた磁気物性測定や,進められずにいた光照射下での分光・物性測定を至急進めていく. 昨年度,ガス雰囲気下における顕微ラマン分光実験において,ガス吸着と光照射の複合効果に関する知見が得られているが,現段階ではまだ,微視的・局所的な結果に留まっているため,これらの知見を巨視的な物性測定へと展開する必要がある.そのために,ガス雰囲気制御下における光照射磁気測定用のプローブの製作を行う.当初,ガス吸着下での光照射による磁気相制御は,光照射単独による磁気相制御による結果があるていどはっきりしてきてから取り組む項目と位置付けていたが,ガス吸着の併用がより効果的であると分かってきたので,こちらの項目についても今年度から積極的に取り組んでいく.
|
Research Products
(17 results)