2022 Fiscal Year Annual Research Report
Flexible control of covalent bonds based on redox-active highly strained compounds
Project/Area Number |
21H01912
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石垣 侑祐 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (60776475)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高歪化合物 / 酸化還元系 / 異性化 / 構造制御 / エレクトロクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,標準から逸脱した構造パラメータをもつ高歪化合物,あるいは光/熱などの外部刺激により構造変化を示すレドックス活性分子に着目し,前例のない応答性分子の創出を目的に研究を実施した。二つの課題成果を抜粋し,概要を以下に述べる。 課題IIでは,先に見出した光/熱異性化を示す分子をベースに,中央のアントラキノジメタン骨格の数を増やした誘導体を設計・合成した。まず,アントラセンを1-6個有するジカチオン種を合成し,酸化還元挙動を調査した。その結果,アントラセンユニットの酸化がクーロンの法則に従うことを明らかにした。一方,二電子還元を行うと,アントラセンが3つ以上の場合にはジカチオンと同様に直交してねじれたビラジカル種のみが得られるのに対し,2つの場合では速度論的生成物として単離したビラジカルを加熱することで,熱力学的に最安定な生成物として折れ曲がり型の構造が得られることを見出した。これらのスイッチング特性はアントラセンの数によって制御可能であり,9,10-オリゴアントリレン誘導体でこれまでに構造決定されているターアントラセンを大幅に超える6つのアントラセンオリゴマーの構造決定に成功した点は特筆すべきである。 課題IIIでは,本研究に先立って合成したビスキノジメタン(BQD)誘導体に着目し,骨格拡張による高次アセン創出を目指して研究を実施した。現在までに中央骨格のπ拡張を行い,ヘキサセンの形成を示唆する結果が得られている。ここで,これらの高次アセン創出にはジアリールメチリウムユニットの設計も重要なカギとなる。これに対し,オルト置換戦略を新たに提唱し,HOMO/LUMO準位を制御可能なことを明らかにした。 以上の知見を基に,今後さらに研究を加速させる計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題にて設定した三つの課題において論文発表を実施し,次の成果につながり得る設計指針を獲得できていることから,順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
課題Iでは,結合の伸縮及び物性変化の可能性について,X線結晶構造解析,ラマン測定,UV/Vis/NIR吸収スペクトルにより調査する。この際,温度変化による結合の伸縮/切断性を明らかにするため,各測定を低温及び高温下で実施する。また,実験的に解明することが難しい部分については理論計算によってサポートする。
課題IIでは,中央六員環の環反転の抑制が可能な分子を設計・構築することで,目的とする応答系の実現に向けて検討を進める計画である。現在までに,π系を拡張した誘導体の合成法をほぼ確立しており,今後の迅速な研究展開が期待される。
課題IIIでは,高次アセンの創出に向け,実験結果を分子設計へフィードバックしながら検討を進める。具体的には,アセンを安定化し得るカチオン部位を設計することで,アセン構築のみならずレドックス刺激による可逆な相互変換の実現に向けて推し進める。
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Research Products
(36 results)