2023 Fiscal Year Annual Research Report
Flexible control of covalent bonds based on redox-active highly strained compounds
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21H01912
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石垣 侑祐 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (60776475)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高歪化合物 / 酸化還元系 / 異性化 / 構造制御 / クロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,標準から逸脱した構造パラメータをもつ高歪化合物,あるいは光/熱などの外部刺激により構造変化を示すレドックス活性分子に着目し,前例のない応答性分子の創出を目的に研究を実施した。当該年度の研究実績として二つの成果を抜粋し,概要を以下に示す。 課題IIにおいて,先に見出した加熱/冷却により酸化特性のスイッチングが可能なチエニル誘導体をベースに,骨格のπ共役系を拡張,あるいは骨格との立体反発の程度を変調した誘導体を設計・合成した。これにより,速度論的/熱力学的安定性及び活性化障壁に与える影響を明らかにし,例の少ない熱平衡による開殻性制御に関する知見を得ることを目的とした。実際に,骨格のπ系を拡張した場合,開殻種の寄与が減少することを見出した一方,フィヨルド領域の立体反発を減少させるよう窒素を導入した誘導体では,活性化障壁が下がり,低温においても速い熱平衡によって開殻種の寄与があることを明らかにした。 課題IIIにおいて,本研究に先立って合成したビスキノジメタン(BQD)誘導体に着目し,骨格に柔軟性を付与することで新たな機能獲得が可能と期待し,柔軟なスペーサーを有する分子を設計した。実際に合成したところ,低温では一波四電子の酸化波と還元波が大きく分離して観測された一方,室温では,酸化波のみが大きく低電位側にシフトすることを明らかにした。実験的に開殻種の寄与が観測されなかったことから,HOMO準位の高いねじれ型構造が生じた結果であると考えられる。これらの実験/理論的証拠を得ることで,静電反発の影響を受けない多電子移動が可能なことを明らかにし,構造変化が鍵を握っていることを示した。 以上の知見を基に,今後さらに研究を加速させる計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題にて設定した三つの課題において論文発表に至るまでの成果を獲得し,次の成果につながり得る設計指針を獲得できていることから,順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
課題Iでは,結合の長さと物性との関係性について,X線結晶構造解析,ラマン測定,UV/Vis/NIR吸収スペクトルにより調査する。この際,温度変化による結合の伸縮/切断性を明らかにするため,各測定を低温及び高温下で実施する。溶液及び固体状態において光/熱応答性についても調査し,実験的に解明することが難しい部分については理論計算により知見を得る。 課題IIでは,π骨格のサイズと立体反発の程度を適切に設定した分子を設計・構築することで,目的とする応答系の実現に向けて検討を進める計画である。現在までに,π系を拡張した誘導体の合成法を確立しており,電子供与性/求引性置換基の導入による物性変化についても併せて調査する。 課題IIIでは,高次アセンの創出に向け,実験結果を分子設計へフィードバックしながら検討を進める。現在までに,アセンを安定化し得るカチオン部位の設計指針を獲得できており,レドックス刺激によるアセン構築のみならず可逆な相互変換の実現に向けて研究を推進する。
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Research Products
(22 results)