2021 Fiscal Year Annual Research Report
小さな芳香環を基盤とする有機光レドックス触媒系の開拓
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21H01928
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
小池 隆司 日本工業大学, 基幹工学部, 准教授 (30451991)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光触媒 / 有機触媒 / ラジカル反応 / 開殻種 / 芳香族化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
2008年以降、光レドックス触媒作用を基軸とした分子変換反応の開発が急速に進展し、合成化学分野にパラダイムシフトを起こしている。多くの触媒反応はルテニウムやイリジウムなどの高価で毒性もある貴金属錯体光触媒を使用している。これに対して、本研究では貴金属錯体光触媒を凌駕する有機分子光触媒を創製し、前例のない分子変換反応を開発することを目的としている。とくに合成の容易さや汎用性を重視し、小さな芳香環構造を基盤とした有機分子光触媒の創製に挑戦している。本研究では、ベンゼン環が三個縮合したアントラセンよりも小さな構造体での優れた光触媒機能開拓をめざす。 4年の研究期間内に、以下の三つの研究内容を重点的に行う。①貴金属錯体光触媒よりも高い還元力または酸化力を有する触媒の開発、②既存の触媒系では困難な分子変換反応の開発、③光触媒の開殻種による新しい反応化学の開拓。とくに本年度は、アントラセンやナフタレンで二つのジアリールアミノ基を架橋した有機分子光触媒に関して研究を進め、基本構造ユニットの設計指針を固めた。また、計算化学的手法を用いた分子設計を検討し、ホウ素官能基を架橋した光触媒の合成に成功した。反応開発においては、単純なエステル類の炭素-酸素結合切断を経た炭素ラジカル種発生を基盤とする反応において、ベンゼンを架橋部位に有するジアリールアミノ型触媒が有効であることを明らかにした。現在、論文執筆準備中である。さらに、不斉反応を指向したシクロファン型触媒の合成にも着手し基本ユニットの合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機分子光触媒の基本設計指針を見出し、いくつかの新しい触媒の合成に成功した。また合成した触媒をもちいた反応開発にも着手している。ナフタレン型触媒を用いた難還元性化合物の一電子還元を鍵とする反応はChemical Communications誌に発表し、内表紙に採用されるなど高い評価を得た。さらに、計算化学を用いて新しいコンセプトの有機分子光触媒の創製にも着手し、もっとも単純な構造の触媒は合成に成功した。最終的に既存の触媒系では達成が困難な高エナンチオ選択的な反応へと展開していくためのシクロファン化合物の原料合成にも取り組み、基本ユニットの合成は達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに研究が進展しているトリアリールアミノ型触媒に関しては引き続き、触媒の合成と反応開発を進める。昨年度新たに合成することができたホウ素架橋型触媒に関して、その触媒機能を各種スペクトル測定により明らかにしつつ、新反応の開発に取り組む。また、キラル有機分子光触媒の創製は本研究の重要なテーマの一つである。昨年度合成に成功した基本ユニットからさらに官能基化を進め、キラルなシクロファン架橋型光触媒の創製と反応開発をめざす。
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Research Products
(11 results)