2021 Fiscal Year Annual Research Report
高求電子性リン反応剤を用いるリン酸トリエステル合成の機構解明と応用展開
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21H01929
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
布施 新一郎 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (00505844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増井 悠 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (70714377)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 三塩化リン / 求核置換反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
リン酸トリエステルは医薬品、機能性材料として重要であるが、三つの異なる置換基をもつリン酸トリエステルは改良ホスホロアミダイト法により合成されることが多い。本法は高コストで廃棄物が多いことが問題となっている。有機リン化合物の原料として、安価で入手容易な三塩化リンは最も多く用いられているが、三塩化リンに対して三つの異なるアルコールを導入する合成法は過剰反応が進行しやすく、実用的な手法となっていない。本研究では、マイクロフロー合成法を駆使してこの問題を解決し、なおかつ反応が極めて高速であるため解明されていない点も多い、三塩化リンの求核置換反応についての基礎化学的知見の獲得も目的とした。 R3年度は三つの単純な構造のアルコール(2-インダノール、フェネチルアルコール、エタノール)を用いて、三塩化リンに対する求核置換反応を検討した。その結果、マイクロフロー合成法を用いることで、一つ目のアルコールの導入を高選択的に進行させることに成功した。なお、対応するバッチ合成法を検討したところ、収率は大幅に低下した。これにより、マイクロフロー合成法の本反応における優位性を確認した。一方で、二つ目のアルコールの導入に関しては、マイクロフロー合成法を用いてさえも満足のいく結果は得られず、過剰反応を抑止できないことがわかった。そこで、過剰反応を抑止するための添加剤を検討したところ、イミダゾールを添加することにより、収率が大幅に向上することがわかった。この手法を用いることにより、三塩化リンに対する三つの異なるアルコールの連続導入で、総収率80%を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R3年度の目標としていた、三塩化リンに対しての三つの異なるアルコールの連続導入による高収率でのリン酸トリエステルの合成を達成した。予定通りに研究は進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、R4年度は、昨年度に開発したマイクロフロー合成法を駆使して、アルコールの基質適用範囲を検証する。医薬品として有用な化合物の合成も試み、アルコールの電子的、および立体的要因が反応成績におよぼす影響を明らかにする。また、R5年度に当初予定していた理論計算による反応機構解析についてもR4年度に先取りして着手する。
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