2022 Fiscal Year Annual Research Report
Innovation in reactions and synthesis of silanols
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21H01934
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下川 淳 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60431889)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シリルシラノラート / シランジオール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、シリルシラノラートが遷移金属シリル錯体の前駆体として有望であることを示すため、新たなシリルシラノラート類を設計し、合成法を確立することを計画した。研究の結果、ジフェニルシリルシラノラートを新しいシリル化試薬として開発することに成功し、様々なジフェニルシリルシラノーラートのナトリウム塩の統一的な合成法も開発できた。この汎用性の高い試薬は、パラジウム触媒によるシリル化反応において、幅広いシリル基をトランスファーさせることが確認された。本研究で新しい試薬として開発されたジフェニルシリルシラノラートは、以前報告した試薬であるジメチルシリルシラノラートの調製の困難さや貯蔵の難しさなどの問題を解決するものである。 また、7員環構造を含むテトラアルコキシシランが2つのアルコキシ基が求核種によって逐次的にアリール基に置換できるという予備的な知見をもとに、異なるアリール基をもったジアリールシランを合成することを計画した。研究の結果、ジオキサシレパニル基と2つのトリフルオロエトキシ置換基を有するテトラアルコキシシランをアリールグリニャール試薬で処理し、トリフルオロエトキシ置換基のうち1つを選択的に交換できることがわかった。トリエチルアミンの存在下でトリフルオロエトキシからメトキシ基へエーテル交換した後、グリニャール試薬による2回目の置換が進み、ジアリール化されたジオキサシレパニルが得られることがわかった。最終的に、ジオキサシレパニル基の炭素骨格の除去はヨウ化トリメチルシリルの存在下で行い、ジアリールシランジオールの信頼できる合成方法が確立できた。この研究によって異なるアリール基をもったジアリールシランジオールを信頼性高く合成することができるようになった。本成果は現在論文執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進んでいると考えている。当初のシラノールを用いるという大きな目的についてもシリルシラノラートの開発が実現したことから十分達成している上、今回その反応剤を改善することができたことからも一定の発展は実現できたと評価している。研究をすすめる中でシラノールの反応性と類似したところにアルコキシシリル基の反応性があったことから7員環ジアルコキシシリル基のシリルアニオンについてその反応性や特徴を調査する研究がすすんでいるが、当初の研究目的から大きな枠組みとしては外れていないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
シラノールという分子種の反応性が結局は酸素置換されたケイ素原子の反応性と共通点を持っていることが知見として得られてきたため、7員環ジアルコキシシリル基の二量体をもちいてアルコキシド塩基との反応によりシリルアルカリメタル種を発生させる試みについても検討をすすめる。シリルアルカリメタル種を温和な条件下で発生することができれば直接的に求核的な反応によってケイ素官能基を分子に導入することも可能であり、またシリルアルカリメタル種にはハロゲンメタル交換などの反応に使える予備的な知見もあることから、新しいアルコキシシランの使い方としてアニオン種を主に使う化学への展開を考えている。アルコキシ化されたシリルメタル種などはあまり知られていない分子種であることから、この内容を深めることで広範な反応に応用することが可能になると思われる。実際に種々の分子を有用なシリル基でシリル化する試みを推進する。
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Research Products
(11 results)