2022 Fiscal Year Annual Research Report
立体発散的合成を基盤とした複雑系巨大天然物の構造解明
Project/Area Number |
21H01938
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高村 浩由 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (70422798)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 有機合成化学 / 発散的合成 / 天然物 / 構造解明 / 立体化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物活性天然物は、官能基や分子形状を介して生体内標的分子と特異的に相互作用することで生物活性を発現する。したがって、多官能基化された複雑系巨大天然物は強力な生物活性を持ちうる。これら生物活性天然物の構造決定は、創薬科学や化学生物学へと直結する天然物化学の中でも重要な研究課題である。本研究では、複雑系巨大天然物であるシンビオジノライドおよびブレビスルセナール-Fを研究対象とし、立体発散的合成を基盤とすることで、不明である立体構造を解明する。令和4年度の研究実績概要を以下に記載する。 シンビオジノライドは2,860の分子量と61個の不斉中心を持つポリオール天然物である。これまでの研究により、立体発散的合成を基盤とすることで、C79-C104フラグメントの立体構造を改訂するに至った。本年度は、計算化学を用いた当該フラグメントの配座解析を行った。その結果、本フラグメントはC95位においてジグザグ配座が解消された分子形状を有することが示唆された。今後は、計算化学と合成化学を組み合わせることで、他の部位の立体構造を解明する。 ブレビスルセナール-Fは2,054の分子量を有するポリエーテル天然物である。本年度はQR環部の合成に着手した。フリルアルコールの転位反応を鍵反応に用いることで、Q環部前駆体を合成した。また、立体選択的アリル化およびアルケンの異性化を用いることで、R環部を合成した。今後はQ環部とR環部の連結を行い、当該部位の8個の考え得るジアステレオマーを立体発散的に合成する。合成完了後、これら8個の合成品と天然物とのNMRデータの比較を行うことで、天然物の当該部位の立体構造を解明する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
立体発散的合成と計算化学を組み合わせることで、シンビオジノライドのC79-C104フラグメントの配座解析を行った。また、ブレビスルセナール-FのQ環部前駆体とS環部の合成をそれぞれ完了した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も複雑系巨大天然物を研究対象とし、合成化学的アプローチによる構造決定を検討する。 これまでの研究により、シンビオジノライドの分子全体の7割に相当する各部位の合成と構造決定を完了している。本研究では、残り3割に相当する立体構造未解明部位の合成と構造決定を行う。まずは、C61-C83フラグメントの合成を検討する。 ブレビスルセナール-Fの環状部位、すなわちA-Q環部、R環部、S-W環部、およびX環部のそれぞれの相対立体配置はNMR解析により決定された。しかしながら、これらの相対関係および鎖状部位の立体化学は不明である。そこで本研究では、立体化学未決定部位の合成と構造解明を行う。まずは、AB環部、QR環部、およびRS環部を研究対象とする。
|