2022 Fiscal Year Annual Research Report
キラル第三級炭素ラジカルの立体特異性を実現する緊密ラジカルペアの確認
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21H01939
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西形 孝司 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90584227)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 立体特異的反応化学 / カップリング / 緊密ラジカルペア |
Outline of Annual Research Achievements |
緊密ラジカルペアを経由すると期待される反応の開発が本研究の目的である。本年は、光学活性アルキルハロゲン化物のキラリティーを維持しながら行える立体特異的反応の探索を行った。その結果、これまでに次に示す3つの反応の確認ができた。1)立体特異的薗頭反応、2)立体特異的フッ素化反応、3)立体特異的シアノ化反応1)キラルαブロモアミドと末端アルキンを銅触媒とフェナントロリン誘導体配位子存在下反応を行うと、原料のキラリティーを維持した生成物が得られた。原料と生成物のX線結晶構造解析の結果、本反応は立体保持で進行していることが分かった。アルキニル銅との直接反応や反応経時変化などからある程度機構解析を行うことができたが、これが酸化的付加経由か、それとも、緊密ラジカルペアを経由するラジカル付加なのかは明確にできていない。しかし、In-situ IR解析から、アルキニル銅がアミドに配位することが重要な要素であることが分かった。2)キラルαブロモアミドとフッ化セシウムを銅触媒とビピリジン誘導体配位子存在下反応を行うと、原料のキラリティーを維持した生成物が得られた。原料、および生成物のX線結晶構造解析の結果、反応は保持で進行していることが分かった。3)上記同様に立体特異的シアノ化を発見しているが、知財の関係上詳細は控える。 以上、光学活性原料をラセミ原料から分離しながら反応に用いることで、各種キラル第三級アルキルハロゲン化物の立体特異的反応を発見することができた。しかしながら、十分に光学活性体を分けられない場合もあり、これは今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
立体特異的薗頭反応を仕上げ、論文投稿することができた。 立体特異的フッ素化反応を知財化すべく特許出願することができた。また、フッ素化反応も論文発表できた。 そのほか、緊密ラジカルペアを経由しているであろう反応系を、予想以上に発見することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
【計画1:原料の調達】 反応の立体化学検証には、光学活性なαブロモカルボニルが必要である。予備的検討ではダイセル製キラル分取カラムを用いることで、基質を手軽に分離できることが分かっており、引き続き来年度もキラル分取による方法で原料調達を行う。しかしながら、これまでの検討で分離分取が困難なエナンチオマーがあるので、その場合にはジアステレオマーも検討する。カルボニルのα位およびエステルやアミド部位に光学活性部位を有する基質を検討する。 【計画2:反応検証】適用可能な反応群の開発:キラル第三級アルキルハロゲン化物(3°RX)が求核剤(Nu-H)、有機(半)金属試薬(RM)、または、炭素―炭素多重結合と反応した場合、各反応(付加脱離型、付加型、クロスカップリング、置換型反応)において第三級炭素の立体化学が維持されるかを検証する。予備検討では、銅触媒存在下、アミンとαブロモカルボニルが立体特異的にカップリングすることを見出している。さらに、末端アルキンとキラルアルファブロモアミドを銅触媒存在下反応させるとキラリティーを維持した薗頭型生成物に成功しているため、これらの予備事実を基盤として適用できるクロスカップリングの範囲拡大を研究していく。また、発見した、シアノ化に成功しているため、これをもとにβアミノ酸および対応するペプチドの合成を試みる。
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Research Products
(11 results)