2023 Fiscal Year Annual Research Report
自己集合過程の速度論的ロックを利用した巨大ベルト状マクロサイクルの創製
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21H01948
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
酒田 陽子 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (70630630)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 自己集合 / 速度論的制御 / 金属配位結合 / ポリエチレングリコール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、熱力学的平衡から離れた非平衡状態において自己集合を制御することで、従来の熱力学的制御下では得ることが困難な自己集合型錯体の構築手法の確立を目指している。初年度の研究において、2,3,6,7-テトラアミノトリプチセンとPd(II)イオンを錯形成する際に、複数のトリエチレングリコール鎖を導入したピラー[5]アレーン誘導体をテンプレートとした場合に、五核メタロナノベルトが速度論的に生成し、非常にゆっくりと熱力学的に最安定な四核メタロナノベルトに変換していくという珍しい現象が観測され、オリゴエーテルが錯体部位と相互作用することで環サイズ変換が速度論的にロックされるという知見を得た。本年度は、コア構造を持たない分子量の異なる鎖状のオリゴエーテル(ポリエチレングリコール:PEG)を用いた場合のロック効果を見積もった。PEGの速度論的ロック効果は、単離した五核メタロナノベルトの環サイズ変換がPEGの存在により抑制されるかを観測することで評価した。PEG非共存下において、五核メタロナノベルトが、三核、四核、五核メタロナノベルトの混合物へ変換する際の半減期は15分であった。これに対し、平均分子量1000のPEG存在下で同様な実験を行った結果、半減期は74分となり、変換速度は5倍程度抑制された。これにより、コア構造を持たない鎖状のオリゴエーテルでもサイズ変換の速度論的ロック効果があることが示された。また、このロック効果の分子量依存性についても調査した。平均分子量1000から10000までのPEGを用いた場合は、3倍から7倍の抑制効果があり、分子量とその抑制効果に顕著な相関は見られなかった。一方、平均分子量20000を超えるPEGでは120倍以上も抑制効果があることを見出した。すなわち、ある一定以上の分子量のPEGを用いることで速度論的ロック効果が劇的に向上することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、複数のトリエチレングリコール鎖を有するピラーアレーン誘導体に加え、コア構造を持たない鎖状のオリゴエーテルにも環サイズ変換の抑制効果があることを見出した。市販の比較的安価な試薬を用いても、速度論的なロックができるという点は興味深く、今後さらに精密にロック効果を制御する上で重要な知見が得られたと考えられる。以上のように、当初の計画通りに研究は遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、コア構造を持たない鎖状のオリゴエーテルにもメタロナノベルトの環サイズ変換を抑制する速度論的ロック効果があることが見出された。今後は、環状のオリゴエーテルを用いたカテナン構造の構築によるロック効果なども検討する。環状のオリゴエーテルを使うことで、大環状効果によるより顕著なロック効果の向上が期待される。
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Research Products
(4 results)