2021 Fiscal Year Annual Research Report
大きな動きと安定性を両立した分子マシンの化学・高分子化学の確立とスマート材料開発
Project/Area Number |
21H01987
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
今任 景一 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (80777970)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高分子化学 / 分子マシン / 分子スイッチ / メカノフォア / 光化学 / メカノケミストリー / アクチュエーター / 応力検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、動きの「大きさ」と「安定性」を兼ね備えた光応答性の分子マシン、スティッフスチルベン(SS)とヒンダードSS(HSS)の化学とそれらを有する高分子の化学(溶液とゲル、エラストマーにおいて、光と力が高分子構造・物性に及ぼす影響)を確立し、「光」や「力」に応答する新たなスマート高分子材料(ゲルアクチュエーターと光可逆的な高感度応力検出フィルム)を開発することを目的としている。 初年度は次の【A】~【E】の5つの項目に取り組んだ。【A】SSとHSSの合成、【B】光・熱異性化の調査と化学の確立、【C】SSとHSSを有する高分子の合成、【D】高分子の光に対する応答性評価、【E】高分子の力に対する応答性評価。【A】では、予定していたSSとHSSの半数以上の合成およびE体とZ体の単離を完了した。【B】では、【A】で合成した一部のSSとHSSについて光異性化と熱異性化をNMRやUV/vis吸収測定により詳細に評価して、光異性化における励起波長や溶媒、酸素の影響を明らかにし、熱異性化における熱力学的・速度論的パラメーターを算出した。また、異性化に伴う動き(末端炭素原子間距離の変化)を密度汎関数理論(DFT)計算から見積った。【C】SSやHSSを有する様々な高分子の合成に成功した。主鎖に複数あるいは主鎖の中央に1つだけ有する直鎖状高分子、側鎖に有する単独共重合体あるいは共重合体、架橋点間あるいは架橋点に有するゲルなどである。【D】主鎖に複数のHSSを有する直鎖状高分子の溶液中における広がりの光応答性をサイズ排除クロマトグラフィーと小角X線散乱測定から評価した。また、架橋点間にHSSを有するゲルの膨潤度の光応答性を重量と体積の変化から評価し、架橋密度の効果を明らかにした。【E】主鎖の中央にZ体のSSまたはHSSを1つだけ有する高分子の溶液に超音波を照射し、高分子鎖を介してSSとHSSに張力を加えて、力に対する応答性をUV/vis吸収測定から評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画の申請時は、初年度に【A】~【D】の4項目に取り組む予定であった。しかし、SSとHSS、これらを有する高分子の合成が想定以上に速く進み、次年度に着手予定であった【E】にも取り組めた。各項目内においても予定以上に進んでいる。また、各項目の合成方法や評価方法の多くを初年度に確立できた点は大変喜ばしく、今後の研究が加速度的に進むことも期待できる。以上の理由により、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、【A】~【E】の5項目に取り組む予定である。【A】と【B】のSSとHSS、これらを有する高分子の合成については方法を全て確立し、おおよそ完了させる。
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Remarks |
有機合成化学協会 令和3年度DIC研究企画賞(今任景一) 第36回中国四国地区高分子若手研究会 ポスター発表の部 支部長賞(石井祥)
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