2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21H01991
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 拓矢 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30525986)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 環状ポリマー / ポリプロピレングリコール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、環状高分子が示す特異的物性の追究を目的としている。環状高分子は、直鎖状高分子とは異なり、鎖の末端がないことに由来する特徴的な物性を示す材料である。環状トポロジーによって鎖の末端の反応や相互作用が防がれ、高分子の特性は大きく変化するため、材料応用への関心は高まっている。過去にポリエチレングリコールを環化し、環状高分子の新規機能を明らかとした。この環状高分子のさらなる機能化を目的として、主鎖の立体規則性に注目し、ホモキラルな環状のポリプロピレングリコール(poly(propylene glycol), PPG)の合成を行った。また、環状高分子の特異的な物性の中でも結晶化は、複数の文献において異なる傾向の結果が報告されており、すべての環状高分子のトポロジー効果を包括的に解釈できていない。さらに、高分子の結晶性において詳細な環状トポロジーの効果と立体規則性の効果を比較した報告例は限定的であり、それぞれの特徴の結晶性に対する競合的な効果を解明することは、材料としての応用を目指す上で重要である。本研究では、環状atactic PPG (at-PPG)と、キラルなモノマーを使用して環状isotactic PPG (it-PPG)を合成に成功した。これらの高分子について示差走査熱量測定(DSC)、X線散乱測定、偏光顕微鏡観察(POM)を通じて評価し、主に結晶性におけるトポロジーと立体規則性の効果を明らかにした。また、プロピレングリコールを開始剤とした直鎖および環状it-PPGの合成を達成し1H NMR、SECおよびMALDI-TOF MSを用いて合成確認を行い、13C NMRから立体規則性が高度に制御されたことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果より、直鎖および環状のat-PPG、R体モノマーから合成したR-it-PPG、S体モノマーから合成したS-it-PPGの6サンプルのDSC測定を行った結果、立体規則性の制御によって結晶性が著しく向上することを見出した。さらに、直鎖状PPGと環状PPGでは大きく融点が異なった。この結果から、環状トポロジー効果により、結晶性がさらに変化したといえる。さらに、環状トポロジー効果は単結晶のパッキングに大きく影響を及ぼしていることが示された。このように合成法の確立とトポロジーに依存した興味深い物性を見出したため、研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、DSCから融解エンタルピー、結晶化度などの評価を行う。また、今回測定したPPGの2倍の分子量のPPGや、PPG-PEG-PPGのトリブロックコポリマーでの測定を行う。さらに、偏光顕微鏡を用いて、同様の手順で結晶化させた直鎖状および環状R-it-PPGの球晶の観察を行う予定であり、他のサンプル測定や、昇温降温過程で観察し結晶生長速度、核生成速度の測定を行い、トポロジー効果が発現する結晶成長過程を明らかにする。
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