2021 Fiscal Year Annual Research Report
スルホニルアニリン系蛍光色素の新機軸確立と細胞イメージングへの展開
Project/Area Number |
21H02008
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
片桐 洋史 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (40447206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 智哉子 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 講師 (50608908)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スルホニルアニリン / 蛍光色素 / π共役系 / 分子軌道制御 / 蛍光標識 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は以下の3項目について検討した。 (1)赤色発光を示すスルホニルアニリン系蛍光色素の合成を目指して、隣接するスルホニル基を持つBMeS-p-A位置異性体の合成に成功した。光学特性を評価したところ、BMeS-p-Aと比較して5 nm長波長化していることが明らかになった。本結果は、従来分子設計の基盤とされてきた対称型push-pull系の優位性を覆す結果であり、ベンゼン環の歪みが蛍光波長の長波長化と高い蛍光量子収率に寄与することを示唆している。また、量子化学計算の結果は実験結果と良い一致を示したことから、励起状態の構造最適化と溶媒効果を加味したState-Specific TDDFT法がスルホニルアニリン系蛍光色素の光学特性予測に対して高い適用性を持つことが支持された。 (2)近赤外蛍光色素の合成を目指して、4つのスルホニル基を持つ前駆体の合成に成功し、単結晶X線構造解析によってベンゼン環が大きく歪んでいることを明らかにした。本結果は、全置換型スルホニルアニリンが構造化学的に実現可能な分子群であることを初めて支持する成果である。また、パラフェニレンジアミン骨格を持つ基質の酸化反応では段階合成によって4酸化体を良好な収率で合成することができた。硫黄原子の酸化が進むに連れて吸収と発光波長の長波長化が確認され、酸化状態の異なる新規スルホニルアニリン系蛍光色素の創製と蛍光特性制御の可能性が示唆された。 (3)反応条件の最適化によってスクシンイミジル基をもつBMeS-p-Aの高効率合成法の開発に成功し、企業へ技術移転することで市販品として安定供給が可能となった。本結果によって、モノクローナル抗体の標識において条件検討が容易になることから、標識抗体の作成における研究の加速が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、赤色発光ならびに近赤外発光が期待されるスルホニルアニリン系色素の基本骨格の合成に成功した。また、スクシンイミジル基を持つ蛍光色素の簡便な合成法の確立にも成功していることから、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究成果を基盤として、引き続き赤色発光ならびに近赤外発光が期待されるスルホニルアニリン系色素の合成を検討する。赤色蛍光色素では、既に合成法を確立した隣接するスルホニル基を持つ前駆体を基質に用いて、酸化、ブロモ化、シアノ化の順に検討して目的化合物の合成ルートを確立する。近赤外蛍光色素では、最終段階のアミノ基の導入について、高圧下での反応条件の検討を行う。また、モノクローナル抗体の標識は、供給体制が整ったBMeS-p-A-NHS体を用いて条件を検討し、順次合成が達成された色素をについて検討を進める。
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