2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of thin film materials with long-term low water contact angles
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21H02030
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
幸塚 広光 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (80178219)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 濡れ / 接触角 / コーティング / 膜 / 表面 / 酸化物 / ゾル-ゲル法 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
硝酸塩をアルカリ金属酸化物源とし、アルコキシドをシリカ源とするゾル-ゲル法によってLi2O-SiO2、Na2O-SiO2、K2O-SiO2系薄膜をシリコン基板上に作製し、アルカリ金属の種類と量、焼成温度が、水の接触角の時間依存性に与える影響を調べた。その結果、(1) Li2O-SiO2系薄膜においては、Li/Siモル比を0.24以上とすることにより、約10°以下の接触角を約300 h維持すること、(2) Li/Siモル比0.58なるLi2O-SiO2系薄膜の接触角は、400℃で焼成した場合に10°以下を約300 h維持するが、600℃以上の温度で焼成すると、300 hの間に20°程度まで増加することがわかった。一方、モル比R/Si = 0.4(R = Li, Na, K)なるR2O-SiO2薄膜においては、400℃で焼成した場合に10°以下の接触角を300 h維持したのはLi2O-SiO2薄膜だけであり、Na2O-SiO2、K2O-SiO2薄膜の接触角は、約30°まで増加した。一方、800℃で焼成した場合には、Li2O-SiO2薄膜は20°以下の接触角を、Na2O-SiO2、K2O-SiO2薄膜は10°以下の接触角を維持した。 なお、耐水性に関しては、ICPによる耐水性試験を何度か実施したが、信頼性の高いデータが得られるに至っていない。具体的には、市販のソーダ石灰ガラスの耐水性と遜色ない耐水性をもつという結果となっており、アルカリケイ酸塩薄膜の耐水性として、信じがたい。 一方、水に浸漬したリチウムケイ酸塩薄膜の接触角が、20°程度まで上がりながらも長期間安定であることを新たに見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年3月までに、アルカリケイ酸塩薄膜の水に対する接触角の時間依存性と耐水性に及ぼすアルカリ金属の種類と量の効果の調査、焼成温度・時間の効果の調査、出発原料の種類の効果の調査、ジルコニア等の添加の効果を調査する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響があったため、計画を変更せざるを得ず、接触角の時間依存性に及ぼすアルカリ金属の種類と量の効果の調査、焼成温度の効果の調査を行なうのにとどまった。 一方、水に浸漬したリチウムケイ酸塩薄膜の接触角が、20°程度まで上がりながらも長期間安定であることを新たに見出したのは、予期しなかった発見として評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ICPによる耐水性試験の結果の信頼性を挙げるべく、実験に工夫を加える。 次に、硝酸塩をアルカリ土類金属酸化物源とすることにより、アルカリ土類ケイ酸塩薄膜においても低接触角の長期安定性が見られる可能性があるため、これを調べる。一方、硝酸塩でなくアルコキシドをアルカリ金属酸化物源とすることが、アルカリケイ酸塩薄膜の接触角・耐水性に及ぼす効果を調べる。 令和3年度に、アルカリ金属酸化物の量と焼成温度が低接触角の長期安定性に影響を及ぼすこと、また、水に浸漬した薄膜の接触角が20°程度まで上がりながらも長期間安定であることを見出した。膜厚方向での組成傾斜がこれらの事象に影響を与えている可能性があるため、XPSによる深さ方向分析を実施する。
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Research Products
(4 results)