2021 Fiscal Year Annual Research Report
複合構造を有する中分子天然物を基盤とした生物活性分子の創製
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21H02068
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀧川 紘 京都大学, 薬学研究科, 講師 (70550755)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 天然有機化合物 / 天然物合成 / 中分子 / 生物活性分子 / 複合構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、複合構造を特徴とする中分子天然物を魅力的な研究対象として位置づけ、その化学合成や化学修飾を基盤とするアプローチにより、天然における複合構造の意義に迫ることを目的とする。研究代表者はこれまで、天然由来のポリケチド化合物の合成研究取り組み、その過程でニトリルオキシド、ベンザイン、オルトキノンモノアセタールなどを駆使した単量体や部分骨格構築のための新規合成手法を開発している。本年度はこれらの合成手法を活用し、複合構造を有する2つの天然物、アクレモキサントンAならびにヘリソリンの合成研究を進めた。 多環式ポリケチド天然物の一つであるアクレモキサントンAは合成研究について、すでに論文で報告していた部分骨格の構築からさらに検討を進め、標的化合物の全合成に成功した(学会発表1件)。その合成では、以前、別々に報告していたABCDE環に対応する多環骨格とEFG環に対応するキサントン骨格の構築法を融合させた。合成後半における官能基の整備が難しかったが、イソオキサゾリニウム塩の加水分解、エノールに対する適切な保護基の選択に加え、変換反応の順序を検討することにより成功した。また、二量体型ネオリグナン天然物であるヘリソリンの合成では、光学活性なオルトキノンモノアセタールを用いる独自の合成アプローチを活用し、標的化合物の不斉全合成を達成した。また、合成中間体や天然物のジアステレオマーを含む数種の合成サンプルについて、抗HIV活性試験を実施した。一方、天然物の構造修飾を念頭に、位置選択的に芳香環を導入するためのベンザイン前駆体を開発した(論文発表1件)。この前駆体の特徴は、接着部位としてクロロシリル基を有すること、ならびに温和な条件でベンザインを発生させられること、の2点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で述べた通り、2つの標的化合物の全合成を達成した。これまでに基盤技術の開発、ならびに合成検討はある程度進んでいたとはいえ、複雑な複合構造を有する2つの標的化合物の全合成を達成できたことから、順調に進展していると考えている。論文投稿に必要なデータ収集が不足している点が課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果について論文報告を目指し、速やかに必要なデータを収集する。アクレモキサントンAを標的として今回開拓した合成経路では、量的供給に問題があるため、天然物の生物活性試験や構造解析を十分に行うことは困難であると判断した。ヘリソリンの合成経路については比較的短工程であるため、今後、詳細な研究を進めることも可能である。一方、天然に存在する複合型アルカロイドの単量体に関連する新しい標的天然物を設定しているため、その合成研究を進める。また、天然物の化学修飾に繋げるべく、独自のベンザイン前駆体を用いた合成手法開発も継続する。
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Research Products
(10 results)