2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of chemical catalyst enabling epigenome manipulation
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21H02074
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川島 茂裕 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (40508115)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 触媒 / エピゲノム / ヒストン / アセチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒストンは様々な翻訳後修飾を受けることでエピゲノムを構成し、クロマチン構造及び遺伝子発現の動的な制御に関与している。ヒストン修飾の異常は、がんなど様々な疾患に関わるため、ヒストン修飾を人工的・化学的に導入することができれば、エピジェネティクスが関わる様々な疾患の原因解明および治療につながることが期待されている。しかし、細胞内においてヒストン修飾を化学的に導入しエピゲノムに介入した例は皆無である。本研究では、細胞内においてヒストン修飾酵素のように働く「化学触媒」の開発を目的とする。 代表者らがこれまでに報告した化学触媒の一つであるLANA-DSHは、試験管の中ではヒストンH2Bの120番目のリジン残基(H2BK120)を選択的に高収率でアシル化することが可能であったが、生細胞内において機能しないという大きな問題を抱えていた。本年度は、この問題点を解決するため、ヒストンリガンド部位および触媒部位の改変を試みた。その結果、ヒストンリガンド部位としては、適切な長さのポリエチレングリコール (PEG)を繋ぐことで、ヒストン結合能を保ったまま細胞内の安定性を高めることに成功した。細胞内で安定な触媒PEG-LANA-DSSMeを合成し、生細胞に導入することで内在性のヒストンをアセチル化できることを見出した。また、H2BK120のアセチル化により、転写伸長等に重要な役割を果たしていることが知られているH2Bユビキチン化が阻害されることを見出した。また、触媒部位としては、ヒドロキサム酸にジオールを,アセチルドナーにボロン酸を持たせることで,化学触媒とアセチルドナーで可逆的なボロン酸エステルを形成させる系を開発した。これにより、必要なドナー濃度を1/100 程度にまで減少させることに成功した。この新しい高活性な化学触媒をBAHAと名付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究申請時に掲げていた触媒の2つの問題を解決することに成功し、論文として発表することができたため、当初の計画以上に研究が進呈していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に見出した新たなヒストンリガンドであるPEG-LANAと新たな触媒部位BAHAを組み合わせることによって、新たな触媒PEG-LANA-BAHAを合成し、生細胞内でヒストンアセチル化反応が進行するか検討する。また、H2BK120のアセチル化によって、H2Bユビキチン化が阻害されることがわかっているので、H2Bユビキチン化がその増殖に必要であることが知られているMLL関連白血病のモデル細胞を用いて、触媒的ヒストンアセチル化の表現型を調べる。
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