2023 Fiscal Year Annual Research Report
窒素固定菌の新規な炭素源獲得戦略としての異種微生物間共生型窒素固定の解明
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21H02108
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
境 雅夫 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (20225775)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 直隆 九州大学, 農学研究院, 助教 (20304769)
池永 誠 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (70511822)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 窒素固定 / 植物体分解 / 微生物生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究において、「異種微生物間共生型窒素固定菌集団」は多様な細菌種で構成され、セルロース分解菌や窒素固定菌と推定される細菌種の他に硫酸還元菌のような、その役割が不明な細菌が存在する。そこで本研究では、硫酸還元菌のみを排除した培養系を作出して、その存在の有無による影響を調べた。 高濃度のモリブデン酸は硫酸還元菌の増殖を抑制することが知られている。そこで、硫酸還元菌の排除系を作出するため、NFC培地にモリブデン酸をそれぞれ1.0mM、10mM添加した培地で継代を繰り返した後、通常のNFC培地に戻して継代培養を行った。また、得られた培養系の16S rRNA遺伝子のアンプリコンシークエンスにより細菌群集構造を解析した。さらに、各培養系のセルロース分解活性および総タンパク質定量による増殖量の測定を行った。 モリブデン酸を添加したNFC培地で数代継代培養した結果、硫酸還元菌の活動による硫化鉄の黒色沈殿が認められなくなり、硫酸還元菌の増殖が抑制されていることが推察された。しかし、通常のNFC培地に戻して継代したところモリブデン酸1.0mM添加系は硫化鉄が再び認められるようになり、完全に排除できていなかった。一方、モリブデン酸10mM添加系では、硫化鉄の生成は認められず、硫酸還元菌が完全に排除された。この硫酸還元菌排除系の細菌群集構造を調べた結果、元の培養系に存在していたDesulfobulbus属細菌の消失が確認された。排除系は元の培養系と比べて、セルロース分解活性には有意な差はなかったが、増殖量が50%程度に低下していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未培養の複雑な構成細菌種で安定な培養が維持された異種微生物間共生型窒素固定菌集団内の特定の細菌種を排除した培養系の構築に成功し、その影響を明らかにすることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
異種微生物間共生型窒素固定菌集団内における相互作用や代謝化合物に関与する機能遺伝子の関係性を解明するため、集団のメタゲノム解析を行い、シグナル物質関連遺伝子、セルロース分解・代謝酵素遺伝子や窒素固定遺伝子について解析し、微生物代謝物の解析結果と合わせて微生物間の共生関係や集団の安定性のメカニズムについて考察する。また、培養可能な構成細菌の単離培養による各細菌種の代謝特性を解析するとともに、構成細菌種の組合せの最適化実験による活性の変化や集団の安定性のメカニズムについて解析する。 さらに、現在の培養は液体静置培養で行っているが、液体培養の表層にペリクルが形成されるため、実際の土壌中における集団の存在形態は浮遊型ではなく、植物遺体表面にバイオフィルム状として存在すると予想している。自然界で多くの微生物はバイオフィルムを形成しており、多くのバイオフィルムは複数種からなる微生物群集であることが報告されている。そこでこの集団のバイオフィルでの存在形態を実証する。
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Research Products
(1 results)