2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H02124
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
鈴木 義人 茨城大学, 農学部, 教授 (90222067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土田 努 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (60513398)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ゴール / 虫こぶ / オーキシン / サイトカイニン / インドール酢酸 / 生合成 / アブラムシ |
Outline of Annual Research Achievements |
ハバチで明らかにしたIAA生合成の鍵となるトリプトファン(Trp)からインドールアセトアルデヒド(IAAld)への変換を触媒する芳香族アルデヒド合成酵素(AAS)が,他の昆虫においても同様の機能を有しているかを明らかにすることを目的に,今回はゴール形成昆虫としてオカボノクロアブラムシ,バラハタマバチ等5種ゴール形成昆虫のRNA-seq解析によってAAS遺伝子を明らかにすると共に,ゴール非形成昆虫であるエンドウヒゲナガアブラムシ,カイコのAASも併せて,基質特異性を含めて,IAA生合成に関与している可能性について検討した。その結果,ドーパ等のTrpとは別の芳香族アミノ酸を基質として変換する活性が確認されたにも拘わらず,Trp→IAAldの活性は明瞭には認められず,それぞれの昆虫種で独自にIAA生合成能を獲得した可能性が考えられた。ハバチのAASであるPonAAS2については,Trpと共にドーパを基質とするが,Trpへの親和性が高いことが明らかとなり,基質特異性に関与する可能性の高いアミノ酸残基の置換実験等により,IAA生合成に最適化されている可能性が示唆された。一方,モデル昆虫であるエンドウヒゲナガアブラムシを対象としたゲノム編集技術を用いた生合成酵素遺伝子の破壊に関しては,ゲノム編集技術の導入を本年度の第一目標としたが,基礎生物学研究所の共同利用・共同研究の活用によって,技術的基盤を導入することができ,現在,サイトカイニンの生合成候補遺伝子の破壊系統の作成途上にある。また,ゴール形成性のオカボノクロアブラムシでゲノム編集を可能にすべく,研究室内での卵調製系の確立を検討し,秋にハルニレに集まる産性虫から雄と雌を誘導し,卵を得ることに成功した。植食性昆虫へのIAA生産能付与のモデル系として,線虫へのPonAAS2の導入によって,IAA生合成能を獲得した線虫の作出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通りに実験を実施し,結果を得ることが出来ている。そのなかで,AASがハバチ以外の昆虫ではIAA生合成に関与していない可能性が高いことが明らかになったことは,当初の予定で考えていたAASに対する阻害剤をアブラムシ等へ適用できないという問題につながるが,一方で新たな興味深い研究課題を見出したとも言える。オカボノクロアブラムシの卵調製や,ゲノム編集技術の導入などは予定通り進行しており,またPonAAS2の基質特異性に関与するアミノ酸の情報は,もともと研究計画では想定していなかった成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
ハバチのPonAAS2については,新たな阻害剤候補が見つかっており,その効果について確実なデータを得る。また,オカボノクロアブラムシやエンドウヒゲナガアブラムシ等から調製したIAA生合成酵素液を用いて,新たな生合成の仕組みの解明に取り組む。現時点では過去の文献から想定される候補となる生合成機構が働いている可能性を,既知の阻害剤を用いて検討するとともに,様々な中間体候補化合物を用いた代謝実験によって,生合成経路の推定を行う。一方,植食性のゴール非形成昆虫にオーキシンおよびサイトカイニンの高生産能を付与することを本研究の主要な目的の1つとして掲げているが,昨年度線虫でのIAA高生産能付与に成功した結果を踏まえ,ゴール形成性の昆虫を多く含むアブラムシ科の植食性昆虫であり,室内環境下で維持管理しやすいエンドウヒゲナガアブラムシを対象とした実験に移行する。ただし,アブラムシにおける外来遺伝子の安定的発現系は未だ確立されておらず,発現系の開発を今年度の目標に設定する。一方,サイトカイニンの生合成機構は未だ解明されておらず,候補となるtRNA-IPTの遺伝子破壊実験が進行中だが,共生微生物ブフネラが関与する可能性を再確認することや,植物ではシトクロームP450が関与している側鎖の水酸化を昆虫でもP450が担うのか等を,アブラムシへの阻害剤のインジェクション処理等によって検討する。
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