2021 Fiscal Year Annual Research Report
mitoTALENを用いた雄性不稔性発生メカニズムの解明
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21H02169
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
風間 智彦 九州大学, 農学研究院, 准教授 (30431464)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | CMS / mitoTALEN |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞質雄性不稔性(CMS)は,ハイブリッド種子生産を支える基盤として農業上重要な形質として知られている. 近年,mitoTALENを用いることでミトコンドリアゲノム上に存在する遺伝子のノックアウトが可能であることが明らかにされた.この技術を用いることで, WA型・RT102型CMSイネのCMS原因遺伝子候補であるorf352をノックアウトしても,自殖による種子稔性が回復しないことが明らかとなったことより,このCMSイネのミトコンドリアには,他にもCMS原因遺伝子が存在することが考えられた.一方,なぜCMS原因遺伝子が発現することで不稔を引き起こすのか?については,いまだに統一した見解は示されていない.そこで,本研究ではmitoTALENによって稔性の回復した系統とCMS系統を材料として,CMSがなぜ起こるかを明らかにすることを目的として, ①WA型・RT102型CMSイネの新たなCMS原因遺伝子の同定 ②レトログレードシグナルによって変化する核遺伝子の探索 を行うこととした. 今年度は,①の新たなCMS原因遺伝子の同定のために,orf352をノックアウトして,花粉の形態が回復した個体のミトコンドリアゲノムの構造を明らかにしようとした.mitoTALENによるミトコンドリア遺伝子のノックアウトを行うと,大規模なゲノム構造の再編成が起こることが知られている.今回材料とした系統においても,再編成が起こっており,ショートリードでのNGS解析では,構造の決定ができなかった.②の核遺伝子の発現パターン調査の一環として,orf307をノックアウトして稔性が回復した系統とCW型CMSイネ,それぞれの核遺伝子型背景となったジャポニカ品種のT65の3系統について,成熟花粉を含む葯よりRNAを抽出して,RNA-seqを行なった.現在,データの解析を行なっているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではmitoTALENによって稔性の回復した系統とCMS系統を材料として,CMSがなぜ起こるかを明らかにすることを目的として,①WA型・RT102型CMSイネの新たなCMS原因遺伝子の同定,②レトログレードシグナルによって変化する核遺伝子の探索,を行うこととしている. ①に関しては,イネのミトコンドリアゲノム構造に繰り返し配列が多いこともあり,orf352ノックアウト個体のゲノム配列の決定がうまくいっていない.②に関しては,CW型を用いてデータの取得まで行えた.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではmitoTALENによって稔性の回復した系統とCMS系統を材料として,CMSがなぜ起こるかを明らかにすることを目的として,①WA型・RT102型CMSイネの新たなCMS原因遺伝子の同定,②レトログレードシグナルによって変化する核遺伝子の探索を行うこととしている. ①の新たなCMS原因遺伝子の同定に関しては,ゲノム構造の決定がうまくいかなかったことより,以下の手法をためすこととする. まずは,翻訳されているミトコンドリア遺伝子を明らかにする目的で,ミトコンドリアリボソームと結合するRNAをRNA-seqで明らかにすることができるかをためす.また,orf352のノックアウトを一塩基置換型のゲノム編集ツールであるmitoTALCDを用いて行うことで,ゲノムの再編成をおこなさいノックアウト系統の作出を行う. ②については,CW型でのデータ解析を急ぐとともに,WA型・RT102型CMSで新規に作出するmitoTALCDでのorf352ノックアウト系統も用いて行うことを目指す.
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