2021 Fiscal Year Annual Research Report
イネ胚乳の生殖的隔離における「綱引き」モデルの分子実態解明
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21H02170
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
木下 哲 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 教授 (60342630)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 胚乳 / H3K27me3 |
Outline of Annual Research Achievements |
胚乳における生殖的隔離や最終的な胚乳の大きさは、エピジェネティックな制御によりその初期発生期に決定されることが理解されつつある。穀類胚乳の生殖的隔離では、オス・メスゲノムの「綱引き」とも表現される仕組みが古くから想定されているが、その分子実態は未だに明らかではない。イネを用いた申請者らの解析により、「綱引き」の候補因子として、ポリコーム複合体構成因子のOsEMF2aと、その直接の標的でありH3K27me3のヒストン修飾を受けるOsMADS77を含む幾つかのType-I MADS-box遺伝子群が浮上している。興味深いことに、両遺伝子ともにそれぞれメス由来ゲノム、オス由来ゲノム特異的に発現するインプリント遺伝子であり、まさに「綱引き」を担いうる遺伝子である。令和3年度は、既に作成していたOsEMF2a変異体を用いた詳細な表現型解析、ならびにその標的と考えられるMADS-box変異体の変異体胚乳における詳細な表現型解析を行った。MADSの変異体に関しては、現在のところ単独変異や二重変異体においては明確な表現型を得られておらず、さらなる多重変異体の作出と表現型解析を行っている。OsEMF2a変異体を用いて、ChIP-seqの解析を行い、直接の標的遺伝子群に関してその候補を明らかにしているが、さらにオスメスの対立遺伝子を区別するため、日本晴とキタアケを交配しChIP-seqを行う準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、コロナ禍の中、遺伝研圃場での作業が遅れていたが、人工気象器や温室を用いて計画を補完した。現在のところ準備状況に不備はない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は準備したサンプルを用いてChIP-seq等を行い、NGSにより配列の読み取りを行う。インプリント遺伝子、胚乳発生を司る鍵となる転写因子群、MADS-box転写因子群などのDNAメチル化、ヒストン修飾情報などのエピゲノム情報を読み取ることで胚乳発生で進行する分子イベントの詳細を明らかにする。平行して、胚乳発生の時系列でインプリント遺伝子の変動を追った研究成果に関して論文をまとめる。現在のところ、時期特異的なインプリント遺伝子が多いこと、それぞれエピゲノム情報に特徴的な傾向があることなど新規性に富んだ結果が得られている。
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Research Products
(2 results)