2022 Fiscal Year Annual Research Report
生殖型が異なるネギアザミウマ系統間の遺伝子交流の実態解明に向けた基礎的研究
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21H02192
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
園田 昌司 宇都宮大学, 農学部, 教授 (00325127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上樂 明也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (60542115)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ネギアザミウマ / 産雌性単為生殖 / 産雄性単為生殖 / ゲノム解析 / 遺伝子交流 / 合成ピレスロイド剤抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネギアザミウマには有性生殖を行う産雄型と雌のみによる単為生殖を行う産雌型の2つの生殖型が存在する。両生殖型に関しては別種であることを示す現象と同種であることを示す現象の両方が存在する。本研究の目的は、交配実験やゲノム解析等を通じて、両生殖型の遺伝子交流の可能性をその程度も含めて調べ、遺伝子交流の痕跡や産雌系統における抵抗性遺伝子の起源を明らかにすることである。本年度の研究実績の概要は以下の通りである。1)1頭の雌成虫由来の産雄型(21系統)および産雌型系統(31系統)を確立した。2)確立した計52系統を昨年度に選抜した13のマイクロサテライトマーカーを用いて主成分分析(PCA)を行った。その結果、産雄型の系統は概ね1つのグループにまとまるが、産雌型系統は4つあるいは5つのグループに分かれることが明らかとなった。3)フローサイトメトリーによる倍数性の解析により、産雄型はすべて2倍体、産雌型には2倍体と3倍体の系統の存在することが明らかとなった。4)産雌系統の雌成虫と産雄系統の雄成虫を用いた交尾実験を行った。その結果、両系統間で遺伝子交流の認められる組み合わせとそうでない組み合わせのあることが明らかとなった。5)生殖型や合成ピレスロイド剤抵抗性に関する遺伝子型の異なる8系統について、新たにショートリード型次世代シーケンサーによる全ゲノムリシーケンスデータを取得した。6)ゲノムデータの解析は雇用予定であった研究協力者の退職に伴い、次年度に行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1頭の雌成虫由来の計52系統を確立し、それらの倍数性と遺伝的な関係をそれぞれ、フローサイトメトリーとPCAを通じて明らかにすることができた。また、交配実験によって遺伝子交流の認められる系統の組み合わせとそうでない組み合わせのあることを見出した。さらに、昨年度に引き続き、ショートリード型次世代シーケンサーによる全ゲノムリシーケンスデータを、生殖型や合成ピレスロイド剤抵抗性に関する遺伝子型の異なる8系統より取得することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
確立された1個体の雌成虫由来の52系統について、COI遺伝子配列を用いた系統解析を行う。また、より多くのゲノムワイドSNPデータを活用したadmixture解析、Fst値の算出等を行い、産雄型および産雌型系統間の遺伝的交流の程度について検討すると同時に、生殖型、各殺虫剤抵抗性等に関わる可能性のあるゲノム領域・遺伝子座を探索し、産雌型系統の合成ピレスロイド剤抵抗性遺伝子(T929I)の起源等に関する推定を試みる。
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