2023 Fiscal Year Annual Research Report
生殖型が異なるネギアザミウマ系統間の遺伝子交流の実態解明に向けた基礎的研究
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21H02192
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
園田 昌司 宇都宮大学, 農学部, 教授 (00325127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上樂 明也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (60542115)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ネギアザミウマ / 産雌性単為生殖 / 産雄性単為生殖 / ゲノム解析 / 遺伝子交流 / 合成ピレスロイド剤抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネギアザミウマのピレスロイド系殺虫剤に対する抵抗性に関わるアミノ酸変異(M918T+L1014F、T929I、M918L)の起源を明らかにするために、ミトコンドリアのCOI遺伝子配列を用いて、昨年度に確立した計52系統の系統解析を行った。その結果、52系統は3つのグループ(2倍体産雄型、2倍体産雌型、3倍体産雌型)に分けられた。また、2倍体の産雌型系統でのみ認められたM918T+L1014Fは産雄型から分岐した後に進化したこと、3倍体の産雌型系統でのみ認められたM918Lは2倍体の産雌型系統から分岐した後に進化したことが示唆された。一方、両生殖型系統で保持されているT929Iの起源については、1)産雌型が産雄型系統との交配を通じて獲得した、2)両生殖型で独立して進化したという可能性が考えられた。そこで、20系統から得られた23の全ゲノムリーシーケンシングデータを用いて主成分析(PCA)、admixture解析、Fst値の算出、正の選択領域の探索を行った。その結果、T929Iをもつ産雄型系統と産雌型系統は遺伝的に大きく分化していることが示された。ところが、両者のナトリウムチャネル遺伝子周辺の領域(246 kb)では事実上塩基配列の多型が見られず、強力な選択的一掃の存在が示唆された。一方、M918Lをもつ系統ではそのような選択的一掃は見られなかった。既報の論文により、T929Iはピレスロイド系殺虫剤とDDT抵抗性に関わるが、M918Lは前者のみの抵抗性に関わることが示唆されている。また、2種の昆虫において、DDT抵抗性に関わるアミノ酸変異をもつナトリウムチャネル遺伝子周辺の選択的一掃の痕跡が、過去のDDTの選択圧によって生じたことも示唆されている。以上の結果より、T929IはDDTの選択圧により両系統で独立して進化したと結論付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネギアザミウマの異なる生殖型におけるピレスロイド系殺虫剤に対する抵抗性に関わるアミノ酸変異(M918T+L1014F、T929I、M918L)の起源を明らかにすることができた。また、その成果を英語論文として公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
野外個体群の調査を行い、両生殖型間の遺伝的交流の有無について検討すると同時に、各個体のゲノムワイドSNPをMIG-seqにより取得し、遺伝子交流の程度をPCA、admixture解析等で明らかにする。また、両生殖型系統間の遺伝的交流について検討するために交配実験を継続して進める。その上で、産雄型と産雌型の交雑後代(F1およびF2個体群)のゲノムワイドSNP(昨年度にゲノムリシーケンスにより取得済)を分析し、各交雑後代において、各生殖型由来の遺伝情報が全ゲノム中でどのように引き継がれているかを明らかにする。
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