2022 Fiscal Year Annual Research Report
植物RNAウイルス移行タンパク質の構造解明と輸送ハブの形成機構
Project/Area Number |
21H02199
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
海道 真典 摂南大学, 農学部, 准教授 (20314247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 浩由 立命館大学, 生命科学部, 教授 (30324809)
竹田 篤史 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60560779)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | RNAウイルス / 複製複合体 / 移行タンパク質 / 小胞体膜 / 細胞内輸送システム |
Outline of Annual Research Achievements |
マメ科植物を主な宿主とするプラス鎖RNAウイルスであるRed clover necrotic mosaic virus (RCNMV)の複製複合体は感染初期に微細な斑点状の構造として形成され、時間の経過とともに微細な斑点が融合して徐々に巨大化し、最終的に核とほぼ同じ大きさの巨大な凝集体となる。RCNMVの移行タンパク質(MP)はこれとは別の微細小斑点として形成され始めるが、後に(感染初期)共局在するようになる。MPと複製複合体の共局在性とウイルスの細胞間移行機能には密接な関連があることが前年度までの研究で明らかとなっていた。 タンパク質構造予測ソフトによって、RCNMV MP中にはαヘリックス構造が5カ所存在することが予測されている。個々のαヘリックス欠損変異ウイルスの作製と接種実験の結果、N末端から1つ目と3つ目のαヘリックス構造は、MPのプラズモデスマータ局在性には影響しないが、細胞内でのMPの凝集と細胞間移行機能にとって重要な役割を持つことが明らかとなった。また、RCNMVの複製複合体の形成にMPは必要ないことがわかっている(Takata et al., 2022)が、上記の2種類のαヘリックス変異MPの発現によって複製複合体の凝集が著しく阻害されることが明らかとなった。しかし複製複合体の凝集阻害はRCNMVの一細胞レベルでの増殖には影響しないことがわかった。以上の結果から、RCNMV複製複合体とMPの凝集過程は専らウイルスの細胞間移行にとって重要であることが明らかとなった。 このほかに、RCNMVと同科に属し、MPの配列や形態が全く異なるCarnation mottle virus(CarMV)の遺伝子操作系を確立し、MPと蛍光タンパク質との融合タンパク質の細胞内局在とその条件について詳細な検討を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RCNMV MPの細胞内での凝集と、複製酵素複合体との共局在性とウイルス移行機能への関連について明らかとなったことを受けて、2022年度はRCNMV MP中の構造予測に基づいた変異MP解析を進めた。 MPの凝集に関与する領域は簡単に決定できると予想していたが、N末端側の2つのαヘリックスの変異MPが同時に複製複合体の凝集にも阻害的な効果を発揮する領域として特定されたことは予想外の出来事であった。細胞内での輸送経路として同じ経路もしくは輸送タンパク質を両者が共通して使用していることが考えられ、この可能性について研究を進める予定である。また研究代表者の研究室は新設されたばかりで学生がいなかったが今年度から4回生が4名加わることもあり、研究をさらに加速できる条件が整いつつある。したがっておおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は構造予測ソフトによってRCNMV MPのαヘリックス構造の欠失変異がMPの凝集と複製複合体の凝集に及ぼす影響について詳しく調べた。MPの細胞間移行機能として、一本鎖RNA結合能力とプラズモデスマータ(PD)の分子排除限界を増大させる能力が重要である。そこで今年度は、αヘリックス変異MPがRNAに結合する能力についてElectro Mobility Shiftアッセイによって調べる。さらにPD分子排除限界増大能については、蛍光試薬を滴下してその広がりを蛍光顕微鏡観察するDrop-ANd-See(DANS)アッセイ法によって詳細に調べる予定である。これらの結果がいずれもポジティブなものであれば、変異MPの細胞間移行能欠損は複製複合体との共局在性の喪失によって、おそらくゲノムRNA1の捕捉が出来なくなることが原因という仮説が証明される。また、二つのαヘリックスにはそれぞれセリンとトレオニン残基が含まれており、リン酸化修飾がMPの凝集に関与する可能性を視野に、感染細胞内でのMPのリン酸化状態についても検討する予定である。さらにMPの細胞内輸送経路について、細胞骨格や膜輸送阻害剤を用いて、検討する。 CarMVの2つの移行タンパク質と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現させた細胞の共焦点顕微鏡観察の結果、p7タンパク質は細胞内で小斑点状構造として、またp9タンパク質は網目状構造としてそれぞれ観察された。今年度は各種細胞マーカーを利用して局在場所を特定し、さらにウイルス感染の有無や両タンパク質が発現した場合での細胞内局在について詳細に調査する。合わせて複製酵素複合体の細胞内局在についても、二本鎖RNA結合タンパク質B2とGFPとの融合タンパク質を発現する組換えタバコ植物を利用して調査する予定である。
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