2022 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive analysis of the gall formation mechanisms using super-nested symbiotic system in Smicronyx madaranus.
Project/Area Number |
21H02203
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
土田 努 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (60513398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 義人 茨城大学, 農学部, 教授 (90222067)
別所 奏子 (別所・上原奏子) 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (90876624)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 虫瘤 / ゴール / 共生細菌 / 延長された表現系 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度、中課題1では、実験室内に構築した飼育系を用いて、マニキュアによる産卵管封鎖実験を行い、虫瘤誘導には雌成虫の卵、もしくは卵とともに送り込まれる物質が必要であることを明らかにした。また、虫瘤内の卵の除去実験により、幼虫の存在が虫瘤の肥大化に関与していることを明らかにした。さらに、本種体内の共生細菌を除去すると、成虫時のクチクラ硬化が遅延し、虫瘤形成が著しく遅延することも示した。このことから、本種共生細菌は宿主の重要な生態的性質にも大きく影響していることが示唆された。 中課題2では、雌が産卵とともに送り込む、虫瘤誘導に関与するタンパク性因子を明らかにするために、雌の卵巣を摘出してRNA-seqによる発現プロファイルを解析した。卵巣内で発現上昇し、細胞外に分泌され、植物のタンパク質に類似の構造を持つ遺伝子を、虫瘤形成に関与する遺伝子候補として選抜した。 中課題3では、虫瘤形成への関与が示唆される植物ホルモン(IAAおよびサイトカイニン)をLC-MSにより定量した。その結果、IAAやサイトカイニンは、形成部位である節とくらべて虫瘤内で大きく増加していた。さらに、マダラケシツブゾウムシでは、虫瘤内を遥かに超える濃度のIAAやサイトカイニンが検出された。トレーサー実験を行ったところ、これらの植物ホルモンは本種ゾウムシが自ら合成していることが確認された。虫瘤内での遺伝子発現をRNA-seqで解析すると、植物ホルモンの合成や受容に関わる遺伝子や花や果実形成に関与する遺伝子が発現亢進していた。一般的な葉に作られる虫瘤では、光合成関連遺伝子が減少するというソースからシンクへの変化が観察されている。しかし、完全寄生植物であるアメリカネナシカズラは通常は寄主植物に光合成産物をも依存しているが、虫瘤内では光合成関連遺伝子発現や活性が上昇するという、シンクからソースへの変換が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症による実験装置構成品の納期遅延により、スケジュールの遅れがあったものの、おおむね順調に研究は進捗した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、中課題2および3について注力する。また、昆虫側の虫瘤形成メカニズムとその進化を理解するために、ケシツブゾウムシ属の系統関係についても明らかにすることを試みる。
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