2022 Fiscal Year Annual Research Report
時計因子の仲介によるカイコの休眠性決定における環境温シグナル経路の分子解析
Project/Area Number |
21H02204
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
塩見 邦博 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (70324241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 岳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20210635)
木矢 剛智 金沢大学, 生命理工学系, 准教授 (90532309)
伊藤 克彦 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80725812)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 休眠 / 温度センサー / 時計遺伝子 / カイコ / クワコ |
Outline of Annual Research Achievements |
2化性のカイコ卵の休眠性は母蛾が胚期に受容した温度条件で決定し,これは温度依存的休眠誘導といわれる。環境温は温度センサー(BmoTRPA1)によって受容され,その情報は蛹期に脳内神経ネットワークに可塑的変化を生み,これが最終的に休眠ホルモン(DH)の放出制御に繋がり休眠性が決定される。これまでに時計コアループ遺伝子群として知られる period (per),timeless (tim), Clock (Clk), cycle (cyc), cryptochrome2 (cry2) オーソログの KO 系統では温度依存的休眠誘導が失われ, per, tim, Clk, cyc の KO 系統では血液中のDH濃度が減少することを明らかにした。さらに,per, tim, cry2 の遺伝子発現は胚期の温度感受性時期において概日リズムを示すことが分かった。これらのことから,カイコの温度依存的休眠誘導は時計遺伝子群の時計機能により調節されていることが示唆された。一方,RNA-seq 解析によって同定されたある遺伝子の発現が胚期の温度感受性時期に特徴的な発現動態を示すことがわかった。これらの結果を踏まえ,本年度は休眠誘導における環境温の情報受容とそのシグナル経路の解析を時計遺伝子の解析を重点において行なった。その結果,上記に示すある種の遺伝子の発現は時計コアループ遺伝子群によって制御されていることがわかった。そしてその遺伝子の KO 系統の作出と表現型解析を進めた。次に時計因子が誘発する脳の可塑的変化の分子解析を遺伝子組換えカイコを利用して神経ネットワークを解析し休眠誘導との関連を調査した。さらに化性決定遺伝子の同定をポジショナルクローニングにより進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書の研究計画・方法の通りにおおむね進んだ。特に時計因子および時計関連因子の機能解析,蛹の脳内神経ネットワーク解析,化性決定遺伝子のスクリーニングの全てが予定通り進んでおり今後の展開が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次の4つのサブテーマ[A]~[D]を行う。 [A] BmoTRPA1の活性化シグナル経路の分子解析:昨年度に引き続き野生型(wt),BmoTRPA1 KO系統およびクワコにおけるRNA-seq.解析を行い,発現量に差のある遺伝子をスクリーニングする。興味深い発現動態を示す遺伝子(ターゲット遺伝子)はCRISPR/Cas9によりKO系統を作出し,表現型および血液中のDH濃度に与える影響を調査する。横山博士によりカイコおよびクワコの飼育と継代が行われる。 [B] 時計関連因子の機能解析:時計関連遺伝子のKO系統の休眠性および血液中のDH濃度に与える影響を調査する。また,アイソフォームの解析を進める。 [C] 時計因子が誘発する脳の可塑的変化の分子解析:遺伝子組換えカイコを利用し神経ネットワークを解析し休眠誘導との関連を調査する。木矢博士により神経ネットワーク解析用の遺伝子組換えカイコの作出が行われる。 [D] 化性決定遺伝子の同定:化性の異なる系統を利用してポジショナルクローニングを行い化性の決定に関わる遺伝子の同定を行う。伊藤博士によりポジショナルクローニングの解析が行われる。
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