2022 Fiscal Year Annual Research Report
内在性ウイルス配列の抗ウイルス機構による媒介蚊の繁殖戦略の解明
Project/Area Number |
21H02206
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
鈴木 康嗣 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 特定准教授 (00896087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀江 真行 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 教授 (20725981)
渡辺 幸三 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (80634435)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 内在性ウイルス配列 / 昆虫免疫 / 昆虫特異的ウイルス / 媒介蚊 |
Outline of Annual Research Achievements |
内在性ウイルス配列(EVE)による抗ウイルス機構が、蚊の生存や繁殖に貢献しているかを検討するため、本年度は、成体蚊への胸腔接種によるCFAV感染がネッタイシマカの生存・産卵および孵化に影響を及ぼすか検討した。その結果、CFAV感染によるネッタイシマカの生存期間や産卵数、そして孵化率への大きな影響は観察されないことがわかった。一方で、特定の環境ストレス条件下では、CFAV感染蚊の生存期間が短縮することや吸血個体数の減退が観察された。以上の結果より、CFAVによるfitness costは、特定の条件によってのみ誘導される可能性が示唆された。また、胸腔接種による感染は、比較対象群間の遺伝的背景の差異を最小化できる利便的な方法である一方で、自然感染蚊におけるウイルス動態とは異なる可能性も高いため、昨年度に構築したCFAV自然感染ネッタイシマカ系統を用いる有用性も確認された。 CFAV自然感染蚊系統におけるCFAVのゲノム配列の決定を行うために、14個体からRNAを抽出し、次世代シーケンス解析を行った。さらに同系統内における異なる成長段階におけるウイルス動態を評価したところ、卵から幼虫期、そして成体期の全ての個体において、比較的高いレベルのCFAV RNA量が観察された。また、頭部、脚、中腸や卵巣といった器官においても、CFAV RNAが検出されたことから、自然感染蚊個体内では、全身にCFAV感染が広がっていることが明らかになった。現在、このCFAV自然感染蚊系統(CFAV-EVE非保有)とCFAV非感染・CFAV-EVE保有系統を掛け合わせることで、遺伝的背景を均一にしたCFAV自然感・CFAV-EVE保有もしくは非保有系統を作製している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験室における通常の飼育環境下での胸腔接種よるCFAV感染では、ネッタイシマカへのfitness costは、ほとんど観察されないことが示され、本研究により樹立したCFAV自然感染・CFAV-EVE非保有ネッタイシマカ系統の有用性が実証された。また、その過程において付随的に感染個体中のCFAVの感染動態が明らかとなり、蚊の昆虫特異的ウイルスでは、初めての知見が得られた。現在、CFAV自然感染蚊系統(CFAV-EVE非保有)とCFAV非感染蚊系統(CFAV-EVE保有)を交配することで、遺伝的背景が均一なCFAV自然感染蚊系統(CFAV-EVEヘテロ接合体)を得ており、この系統を用いたさらなる交配実験によって、CFAV-EVEのCFAV感染によるfitness costとその緩和・おける機能が明らかになると期待されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、交配実験を行っているCFAV自然感染蚊系統を用いて、CFAV感染の産卵や孵化率への影響を評価するとともに、CFAV-EVE配列がその正常化に寄与するかを検討するとともに、CFAVの垂直伝播への影響も評価する。また、野外のネッタイシマカにおけるCFAVの感染とCFAV-EVEの検出も着手する。
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