2023 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of a comprehensive assessment method for biodiversity and ecosystem services in paddy ecosystems based on environmental DNA analysis
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21H02219
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
馬場 友希 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (70629055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 健二 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (10370511)
片山 直樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 主任研究員 (10631054)
山本 哲史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 研究員 (10643257)
山迫 淳介 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 主任研究員 (20748959)
大久保 悟 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, グループ長 (30334329)
池田 浩明 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 再雇用職員 (50343827)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 環境DNA / トンボ / 水田 / 生物多様性 / ろ過 / プライマー / メタバーコーディング分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は水田の生物多様性を把握するための最適な採水回数・場所を提案した。一方、採水方法に関してはいくつかの課題がある。例えば、水田では不純物が多く、ろ過の際フィルターが目詰まりするため、必要量の水をろ過できない、あるいは多大な時間を要するという課題がある。また、DNAの分析結果についても、節足動物についてはプライマーのミスマッチにより検出できる分類群に偏りがあった。例えば水田の代表的な生物群であるトンボのDNAはほとんど検出されなかった。そのため、今年度はろ過方法の改良とトンボのDNAの検出技術の開発に注力した。 ろ過方法の改良については、従来のステリべクスを用いたろ過の代替法として、ガラス繊維(SGF)を用いてDNAを吸着させ、そこからDNAを抽出する手法(SGF法: Suzuki et al. 2023 Limnology)を改良した。具体的には現場におけるSGFの回収はコンタミのリスクを高めるため、フィルターホルダーを改造することにより室内に持ち帰って作業をできるようにした。その結果、従来のステリべクスを用いた方法に比べてろ過にかかる作業時間と資材コストを大幅に削減することに成功した。これと並行して、既往研究を基にステリべクスを用いて同時に複数サンプルを濾過できる装置も作成し、水田調査用に改良した。 トンボのDNA分析については、日本産トンボ類の分子系統情報を基に、高精度でトンボのDNAを検出できる新プライマーを開発した。東京都・茨城県・静岡県・広島県の水田や湿地を対象に、センサス調査と併せて環境DNA調査を行ったところ、高い割合でトンボのDNAを検出でき、さらに現地で観察された種のDNAも多く検出することができた。 上記の開発に加え、これまで栃木県の水田で得られた鳥類の環境DNAの分析結果と野外のセンサスデータとの整合性を検討し、論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「より簡便に水をろ過するための手法開発」を目標としており、予定通りこの目標を達成することができた。また、これまでトンボ類を対象としたプライマー開発も進めていたが、その性能も現地調査によって確かめることができた。水田の鳥類の分析結果についても論文としてまとめ、国際的な学術誌に投稿することができた。以上の成果から、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
水田における環境DNAの基盤技術を構築できたため、最終年度はこれまで水田で得られたデータと新たに得られるデータを用いて、水田の生物多様性の解析を行う。具体的には農法の違いに伴う種数・OTU数・種構成の変化を分析し、水田の管理が生物多様性に及ぼす影響を評価する。その際、交絡要因として、圃場内の環境要因も変数に含めて解析を行う。この結果を基に、水田の生物多様性の評価指標として、どのような変数が有効であるかを検討する。
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